給与所得者等再生について

個人の方の債務整理の手段としては、主なものとして、任意整理、個人再生およ
び自己破産があります。このうち、件数的に最も多いのは任意整理で、その次が
自己破産です。個人再生はそれほど件数は多くありません。

個人再生の件数が少ないのは、個人再生を行うには安定した収入が必要であり、
また、個人再生をやらなければならないほど負債が増大している(または収入が
減っている)方の場合、通常は自己破産の要件(支払不能)も満たしますので
(厳密には、個人再生の要件と自己破産の要件は異なります)、租税公課等の非
免責債権を除くすべての負債が免責される自己破産を選択しがちになるからだと
思われます(個人再生だと、一定金額を返済する必要があります)

また、個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生がありますが、大多数を
占めるのは小規模個人再生で、給与所得者等再生はほとんどありません。給与所
得者等再生があまり使われていないのは、給与所得者等再生の場合、小規模個人
再生よりも返済額が多くなるのが通常だからです。

小規模個人再生では、再生計画で返済する金額(最低弁済額)は、①債権額基準、
②清算価値基準のいずれかで決まります。例えば、再生債権の総額が450万円
で、清算価値が90万円の場合、最低弁済額は①では100万円、②では90万
円となり、①の100万円が最低弁済額になります。
しかし、給与所得者等再生では、③可処分所得の2年分、という基準が加わりま
す。この③可処分所得の2年分が、比較的高額になるというわけです。

それでは、この給与所得者等再生を使うケースについて以下説明したいと思いま
す。

(1)小規模個人再生だと書面決議で再生計画案が否決される可能性がある場合
小規模個人再生では、再生計画案について、再生債権者による書面決議が行われ
ます。例えば、再生債権者がA社、B社、C社の3社で、それぞれの債権額を3
00万円、150万円、100万円とします。この場合において、A社が書面決
議で再生計画案に反対すると、再生計画案は否決されることになります。A社の
債権額は、総債権額の過半数を占めているからです。

他方、給与所得者等再生では、再生債権者による書面決議はありません。再生計
画案について裁判所が認可を出せば、再生債権者はそれに従わざるを得なくなり
ます。

そこで、小規模個人再生では書面決議で再生計画案が否決される可能性がある場
合は、給与所得者等再生を選択することになります。

(2)③よりも①または②の方が高額の場合
給与所得者等再生では、最低弁済額の基準として③可処分所得の2年分が加わっ
ていますが、この可処分所得の2年分よりも①債権額基準または②清算価値基準
による金額の方が大きい場合は、給与所得等再生を検討することになります。小
規模個人再生では、再生計画案について書面決議がありますので、再生計画によ
る返済金額が変わらないのであれば、書面決議のない給与所得者等再生を選択し
た方が安全だからです。

ただし、③が①または②よりも低額になるのはレアケースだと思われます。

給与所得者等再生の詳細につきましては,弁護士にご相談ください。