1 民事再生法198条1項は、「住宅資金貸付債権(カッコ内省略)については、再生計画において、住宅資金特別条項を定めることができる。」と規定し、同法196条3号は、住宅資金貸付債権について、「住宅の建設若しくは購入に必要な資金(住宅の用に供する土地又は借地権の取得に必要な資金を含む。)又は住宅の改良に必要な資金の貸付けに係る分割払の定めのある再生債権であって、当該債権又は当該債権に係る債務の保証人(保証を業とする者に限る。以下「保証会社」という。)の主たる債務者に対する求償権を担保するための抵当権が住宅に設定されているものをいう。」と定義しています。
2 住宅ローンについて借り換えを行う場合、従前の住宅ローンの一括返済分に加えて、他の用途に利用する金銭もあわせて借り入れる場合があります。
この場合、従前の住宅ローンが住宅資金貸付債権に該当していたのであれば、その返済に充てられた金額については住宅資金貸付債権になりますが、他の用途に利用する金銭については、その使途により判断する必要があります。ここでは、借り換えにより総額2750万円を借り入れて抵当権を設定し、うち2500万円を従前の住宅ローンの返済に、他残りの250万円を他の用途に充てたとします。
例えば、家の壁や床をリフォームするために250万円を使った場合、家や壁のリフォームは個人再生法196条3号が規定する「住宅の改良に必要な資金」になりますので、この250万円の部分も住宅資金貸付債権になります。
しかし、250万円を屋根に設置する太陽光発電システムの購入資金に充てた場合、取り外しのできる発電設備を購入したということになりますので(自家発電機の購入と同視できます)、住宅の改良に必要な資金とまでは言えなくなります(なお、住宅の改良に必要な資金に該当するという見解もあり得ます)。
そうなりますと、住宅資金特別条項は使えないということになりそうですが、この事例では、借入総額2750万円のうち太陽光発電システムの購入に充てたのはわずか1割の250万円ですので、実務上は、借入金全体として住宅資金貸付債権の性質は失わず、住宅資金特別条項の利用が認められるということになるでしょう。
なお、千葉地方裁判所では、弁護士が代理人として個人再生の申立てを行う場合は原則として個人再生委員が選任されますが、上記のような法律上の問題(ここでは住宅資金貸付債権に該当するかどうかの問題)がある場合は、裁判所は個人再生委員の意見を聴取したうえで手続きを進めますので、千葉地方裁判所でも個人再生委員が選任されることになります。