弁護士法人心柏駅法律事務所の弁護士の白方です。
今回は,離婚の相談について,弁護士に相談するのがふさわしい内容かどうかという観点からお話ししたいと思います。
1 弁護士は法律のスペシャリスト
これはあえて説明するまでもないと思いますが,弁護士は法律のスペシャリストです。司法試験では,憲法,民法,刑法,商法,民事訴訟法,刑事訴訟法などの法律について試験が行われます。
離婚との関係では,弁護士は,離婚原因などを定めている民法,家庭裁判所での離婚手続きについて規定している家事事件手続法の知識(判例や実務の知識も含みます)を駆使して相談に対応することになります。
具体的には,離婚そのものについて争いがある(相手方配偶者が離婚を拒否している)場合には,別居期間や別居の原因など夫婦関係が破綻していることを根拠づける事実関係について相談者の方から聞き取りを行い,民法が定めている離婚原因の有無を判断した上で,その後の手続についてご説明することとなります。
相手方配偶者に離婚を求められている方のご相談の場合も,離婚原因の有無について事実関係の聞き取りを行って判断し,その後の調停,裁判等の見通しをご説明することになります。
他方,離婚そのものについては争いはなく,財産関係,例えば財産分与について争いがある場合は,別居の時期や財産の種類などについて相談者の方から聞き取りを行い,財産分与の基準時や財産分与の対象となる財産について判断した上で,その後の対応を検討することとなります。
2 夫婦関係そのものについての相談
このように,弁護士は協議や調停などの離婚の手続きや,財産分与などの離婚条件についてのスペシャリストですが,離婚は,夫婦という人間関係の存在を前提とし,その関係を解消する行為ですので,夫婦関係そのものについての悩み(離婚すべきかどうかということや,夫婦関係をどう修復すべきかということなど)を相談するために,弁護士の「離婚」相談に申し込まれる方もいらっしゃいます。
しかし,弁護士は,離婚のみならず債務整理や交通事故の損害賠償請求など依頼者の方々の「人生に関わる」業務を取り扱っていることは確かですが,依頼者の方の「人生そのもの」についてアドバイスなどをする業務を行っているわけではありません。弁護士資格を得る過程で心理学など人間関係に関わる分野の専門教育を受けているわけでもありません。
もちろん,ベテランの弁護士であれば,夫婦関係そのものについての悩みについても適切な相談対応ができるかもしれませんが,それは,弁護士というスペシャリストであるからではなく,その弁護士の人生経験が豊かだからです。
相談する相手を間違うと状況がより悪化してしまうこともありますので,弁護士に相談したい内容が夫婦関係そのものについてであるという場合は,ご両親やご兄弟,ご友人などあなたの人生そのものについて親身になって考えてくれる方々や,夫婦関係を専門とするカウンセラーにまず相談されることをお勧めいたします。