弁護士法人の社員

前回、FIRE(Financial Independence, Retire Early)について記事を書きました。私はFinancial Independenceについてはほぼ達成しているものの(「ほぼ」としたのは金融資産をどの程度貯めたら「達成」なのかわからないからです)、Retire後の生活が思い描けないため躊躇していると書きましたが、自らを犠牲にする月月火水木金金の業務からも離脱しなければならないと思っていましたので、この月月火水木金金の業務からは近いうちに完全離脱することにしました。
なお、弁護士法人は主たる事務所のほか、従たる事務所にもその社員を常駐させなければなりませんが(千葉法律事務所が主たる事務所である弁護士法人心の従たる事務所になります)、社員は法人の役員になるため労働法は適用されません。私は弁護士法人心の社員になりますが、月月火水木金金の状態を前提に私の時給(役員報酬)を計算すると、大学生の家庭教師の時給くらいしかありませんでした。

さてこの弁護士法人の社員ですが、弁護士法に以下のような規定があります。
第三十条の十五 弁護士法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、各社員は、連帯してその弁済の責めに任ずる。
2 弁護士法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
3 前項の規定は、社員が弁護士法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。
4 前条第一項の規定による指定がされ、同条第四項の規定による通知がされている場合(同条第六項又は第七項の規定により指定したものとみなされる場合を含む。)において、指定事件に関し依頼者に対して負担することとなつた弁護士法人の債務をその弁護士法人の財産をもつて完済することができないときは、第一項の規定にかかわらず、指定社員(指定社員であつた者を含む。以下この条において同じ。)が、連帯してその弁済の責めに任ずる。ただし、脱退した指定社員が脱退後の事由により生じた債務であることを証明した場合は、この限りでない。
5 前項の場合において、指定事件に関し依頼者に生じた債権に基づく弁護士法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときは、指定社員が、弁護士法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明した場合を除き、同項と同様とする。
6 第四項の場合において、指定を受けていない社員が指定の前後を問わず指定事件に係る業務に関与したときは、当該社員は、その関与に当たり注意を怠らなかつたことを証明した場合を除き、指定社員が前二項の規定により負う責任と同一の責任を負う。弁護士法人を脱退した後も同様とする。
7 会社法第六百十二条の規定は、弁護士法人の社員の脱退について準用する。ただし、第四項の場合において、指定事件に関し依頼者に対して負担することとなつた弁護士法人の債務については、この限りでない。

第7項に会社法の準用がありますが、その条文は以下のとおりです。
第六百十二条 退社した社員は、その登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負う。
2 前項の責任は、同項の登記後二年以内に請求又は請求の予告をしない持分会社の債権者に対しては、当該登記後二年を経過した時に消滅する。

「弁護士法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、各社員は、連帯してその弁済の責めに任ずる。」つまり、弁護士法人の各社員は、弁護士法人の借金(債務)について弁護士法人の財産で完済できない場合は、連帯して支払わないといけないということです。しかも、退社した社員も、退社の登記後2年以内は、登記前に生じた債務について支払わなければならない可能性があるわけです。
しかし、弁護士法人の社員は、必ずしもその弁護士法人の設立に関わったり、弁護士法人の経営に関わったりするわけではありません。どこそこに支店を設立するため弁護士法人の社員として採用された、または、弁護士法人のイソ弁(従業員弁護士)が支店設立のため弁護士法人の社員となった、というケースも少なくないわけです。つまり、法人の経営には関わっていないのに資産は法人の債務の担保として提供しているという状態なのです。

X(旧ツイッター)で「法クラ」の方たちがときどき弁護士法人の支店長(法人の社員)について話題にしていることがありますが、上記について知っているとその趣旨がよくわかると思います。