相続放棄か時効援用か

被相続人に負債があるものの、長期間返済が行われていなかった場合、消滅時効期間が経過している可能性があります。

消滅時効の効果は、債務者が時効の援用を行うことで確定しますが、この消滅時効の援用権も被相続人の財産に属した権利義務になりますので、相続人は、相続により承継した時効援用権を行使して消滅時効の効果を確定させることができます。これにより、相続人は、時効の援用を行った負債について支払義務を免れることになります。

他方、相続人は、相続放棄を行うことによって負債を相続することを免れることも可能です。債権者が異なる負債が複数ある場合、(いずれも消滅時効期間が経過していることを前提として)消滅時効の援用は負債毎に消滅時効援用通知書を作成して(通常は内容証明郵便で)行わなければなりませんが、相続放棄の場合は、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出し、裁判所から交付される相続放棄申述受理通知書のコピーを各債権者に送付して完了となります。

相続放棄を行った場合、相続人ではなかったとみなされることになりますので、マイナスの財産である負債のみならず、預貯金などプラスの財産についても承継しないことになります。

他方、消滅時効の援用は相続の承認を前提としますので、預貯金などプラスの財産も承継しますが、消滅時効期間が経過していない負債があった場合はそれも承継することになります。

相続放棄をするか、消滅時効の援用で解決するかは、被相続人の財産状況を考慮して検討することになります(なお、限定承認を選択した場合は相続財産の限度で負債を返済すればよいことになりますが、限定承認は相続人全員で行う必要があります。そのため、案件数は極めて少なく、限定承認を取り扱ったことのある弁護士も少ないでしょう。私は、過去に1件だけ扱ったことがあります)。

任意整理のご相談

こんにちは!中年ですがかわいい系弁護士と思い込んでいる白方です!

さて、わたしは主に債務整理の分野を扱っていて、裁判所から破産管財人の依頼を受けることもありますが、自己破産・個人再生と、任意整理の最も大きな違いは何だと思いますか?

もちろん、専門家によって考え方に違いはあると思いますが、わたしが考える最も大きな違いは、自己破産・個人再生はその手続きについて法律で定められており(破産法と民事再生法です)、裁判所で行われる民事手続きですが、任意整理は、その手続きについて定める法律はなく、弁護士が金融業者と個別に行う民事交渉手続きであるという点です。

自己破産や個人再生は、法律で手続の内容やその結果が定められていて、また多数の裁判例がありますので、これらの手続きを行った場合の結果は比較的容易に推測できます。

他方、任意整理は、法律の規定はなく、業者側に任意整理に応じる義務もないですので、分割弁済の合意ができるとしても、その条件は業者によって区々になります。

また、同一業者でも、業者内の取り決めにより特定の日を境に一般的な任意整理の条件を厳しくすることがあり、任意整理を受任した際に想定していた和解内容より、実際の和解内容が厳しくなってしまったこともあります。

このように、任意整理は結果の予測が比較的難しい手続きであるということは認識しておいてください。