相続放棄について

1 相続放棄をする理由として典型的なのは,死亡した被相続人に多額の負債がある,というものです。

被相続人が死亡した後,財布の中を見ると,消費者金融へ返済した際のATMの明細が入っていたため,借金の存在が判明した,ということはよくあります。

借金があることが判明すると,急いで相続放棄の手続をしたくなるのではないかと思いますが,消費者金融やクレジットカード会社について負債がある場合は,一度弁護士に相談することをお勧めします。

というのも,消費者金融やクレジットカード会社は,かつて利息制限法の上限利率を超える約定利率で貸付を行っており,利息を払いすぎて過払になっている可能性があるからです。

仮に,約定利率を前提とした債務(約定残債務といいます)が100万円を超えていても,利息制限法の上限利率に引き直して計算すると,約定残債務がゼロになり,数百万円の過払い金が発生していたということも珍しくはありません。

また,被相続人が利息制限法の上限利率を超える利率で借り入れを行い,完済していた場合,引き直し計算をすれば確実に過払いが発生しています。

過払い金が発生している場合,消滅時効期間が経過していなければ,相続人は消費者金融業者等に対し,過払い金の返還を請求することができます。

弁護士にご依頼いただければ,弁護士は,被相続人の方が取引していた可能性のある業者について取引の有無や,過払い金発生の有無を調査することができます。

なお,取引の有無の調査や過払い金発生の有無の調査は,法定単純承認事由ではありませんので(法定単純承認事由とは,相続を承認したものとみなされる事実のことをいいます。例えば,被相続人の預金を引き出して自分の生活費に充てたような場合です。),調査の結果,過払金はなく負債が残っていたとしても,相続放棄は問題なく可能です。

2 相続放棄をする理由について,被相続人に負債がないとできないと誤解されている方もいらっしゃいます。

しかし,相続放棄は,例えば特定の相続人に相続財産を相続させるために行うことも可能ですし,単に相続手続きに関わりたくないからという理由で行うことも可能です。

弁護士法人心には相続放棄手続の経験が豊富な弁護士が所属していますので,お気軽にご相談ください。