不動産価格の上昇

1 不動産価格、とくに中古マンション価格の上昇は、私が担当する債務整理、広くは借金問題にも影響を与えています。

まず、マンションを購入し住宅ローンが残っていて、かつカードローンやクレジットカードの負債も膨らんでいる場合、中古マンション価格の上昇の影響でマンションがアンダーローンとなっていれば、マンションを売却して住宅ローンを完済し、売却代金の残額でカードローン等の負債を返済すれば、場合によっては債務整理を行わずに借金を整理することも可能になりました。債務整理を行わなければ、信用情報に事故情報が登録されることもないため、経済的信用も損なわれません。

他方、住宅資金特別条項を利用する個人再生手続では、中古マンション価格の上昇によりアンダーローンとなると清算価値が増額することになりますが、その増額により、清算価値の総額が住宅ローン以外の負債の総額に近い、または負債の総額を超えてしまうと、個人再生手続を行っても負債はほとんど、または全く圧縮されないということになり、解決が困難になります。個人再生が困難で、任意整理での解決も難しいということになると、自宅の中古マンションは売却を避けられないことになります。

2 離婚の財産分与の場面においても、中古マンション価格の上昇は影響を与えています。

住宅ローンの残っているマンション(婚姻後に購入したもの)も財産分与の対象となりますが、オーバーローンの場合は評価額0円となり、分与する金額はないということになります。

しかし、マンションの評価額が例えば住宅ローンの残額を500万円上回っている場合、マンションを所有する配偶者は、原則としてその2分の1である250万円を財産分与として他方配偶者に支払う必要がありますが、その支払いが困難であれば、最終的にはマンションを売却してその代金の残額の2分の1を支払うということになります。 このように、近時のマンション価格の上昇は弁護士の業務分野である債務整理や離婚の財産分与にも影響を与えています。

過払金返還請求のご相談について

今回は、弁護士として過払金返還請求のご相談に対応する中で、よくある誤解について少しご説明しようと思います。

1 過払金が発生するケースの基本は、貸金業法(旧貸金業規制法)が適用される業者から、利息制限法の上限金利を超える貸付利率で借り入れを行い返済していた、ということになります。なお、極度額の範囲で借り入れと返済(リボ払い)を繰り返す継続的金銭消費貸借取引で、取引開始当初は利息制限法の上限金利を超えていたものの、途中から上限金利以下になったという場合でも、過払金が生じる可能性があります。

貸金業法は、かつて、みなし弁済という制度を設けていて、みなし弁済の条件を満たしていれば、利息制限法の上限利率を超える利率による利息の受領も適法になるとされていました。

しかし、このみなし弁済の適用条件を満たしていないとして裁判所で訴訟が展開され、最高裁判決によりみなし弁済はほぼ認められないということになったため、利息制限法の上限利率を超える部分の利息の受領が無効となり、過払金として返還を請求する対象となったわけです。

2 貸金業法が適用されるのは、消費者金融会社やクレジットカード会社になりますので、貸金業法が適用されない金融機関、例えば銀行や信用金庫からの借り入れについては、過払金が発生することはありません(貸金業法が適用されない以上、貸金業法が定めていたみなし弁済制度も適用されないからです)。

また、貸金業法の適用対象となる業者(とくにクレジットカード会社)に対する負債でも、過払金が発生するのは借入金(キャッシング、ローン)となりますので、立替金(ショッピング、車のローンなど)について過払金が発生することはありません(貸金業法はその名のとおり金銭の貸付について適用される法律です)。

さらに、法改正によりみなし弁済は2010年6月18日に廃止されましたが、多くの消費者金融会社およびクレジットカード会社は、2007年頃までに新規契約者の貸付利率を利息制限法の上限金利以下に引き下げていますので、それ以降に新規契約を締結して借り入れを開始しても、過払金が発生することはありません(なお、元々利息制限法の上限金利内で貸し付けを行っている業者もあり、このような業者と長期間取引していても過払金が発生することはありません)。

以上をまとめますと、

① 銀行や信用金庫からの借り入れについては、過払金は発生しません。

② ショッピング債務(車のローンなどショッピングクレジットも含みます)について過払金が発生することはありません。

③ 利息制限法の上限利率以下の利率で契約をして借り入れをしている場合は、過払金は発生しません。

今回は以上となります。