弁護士法人倒産のニュース

弁護士法人心では,本年6月1日,三重県四日市市にあらたに弁護士法人心 四日市法律事務所を設立しました。近鉄四日市駅から徒歩1分の場所にありますので,自己破産,個人再生,任意整理などの債務整理,過払金返還請求,交通事故,遺産分割,遺言作成,相続放棄,相続税申告等,お気軽にご相談いただければと思います。

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最近,弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所について破産手続が開始し,負債は51億円あるとの報道に接しました。

また,消費者金融等から回収した過払い金を流用していたとの報道もあります。

 

弁護士が依頼者の方の代理人として過払金返還請求手続を行い,消費者金融やクレジット会社から過払金の返還を受ける場合,振込先口座として通常,弁護士(または弁護士法人)の預り金口座を指定し,弁護士報酬等を差し引いて依頼者の方にお返しします。

弁護士報酬等を差し引いた後の残額は依頼者の方の金銭ですので,そのまま依頼者の方にお返しする必要があり,法律事務所の経費等として流用することは許されません。

 

では,代理人に預けていた金銭を流用され,返還を受けられなくなった場合,法律的にはどうなるのでしょうか。

消費者金融等は,代理人である弁護士により締結された和解契約に基づき,その和解契約で指定された銀行口座に過払金を返還していますので,消費者金融等の過払金返還債務はそれにより消滅しています。つまり,消費者金融等に対しあらためて過払金の支払を請求することはできません。

となると,流用した弁護士に対して不動利得返還請求ないし損害賠償請求をするしかありませんが,その弁護士に資力がない場合は,事実上,返還を受けることは困難になります。

 

弁護士は依頼者の方の金銭を預かることも多いですので,依頼者の方との信頼関係を維持することが重要となります。私は過払金返還請求事件も担当しておりますが,依頼者の方の不安,心配をできるだけ軽減するため,消費者金融等からの入金確認後,ただちに費用の精算を行い,入金から2~3営業日以内に,依頼者の方に指定いただいた口座にお返しすることを心がけております。

 

弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所に債務整理を依頼していた方について,同法人が所属している第一東京弁護士会は相談窓口を設置していますが,弁護士法人心でもご相談を承っており,平日夜間,土日のご相談も可能ですので,お気軽にご相談いただければと思います。

緊急事態宣言

1 私が所属している柏駅法律事務所がある千葉県や東京都では,4月7日に緊急事態宣言が発令されましたが,それに伴い,5月の連休までに指定されていた千葉地方裁判所および千葉家庭裁判所(それぞれ支部も含みます)のほとんどの期日(裁判や調停など)が取り消されました。

その後,東京都や千葉県では5月31日まで緊急事態宣言が延長されましたので(なおご承知のとおり25日解除されました),千葉地方裁判所や千葉家庭裁判所の期日も5月29日の分まで取り消されました。

私は4月6日に債権者集会に出席するため千葉地方裁判所松戸支部に行きましたが(この日は出席者全員がマスクをし,部屋の窓は全開に近い状態でした),それ以降,本日に至るまで,松戸の裁判所には行っていません。6月8日に債権者集会に出席するため久しぶりに松戸の裁判所に行く予定です。

緊急事態宣言により,裁判所の業務も縮小していたようで,裁判所の職員も出勤日数を減らしていたようです。私も4月から5月にかけて少額管財の破産を数件申し立てましたが,いずれの案件も本日現在開始決定は出ていません(ただし,財産保全の必要性があるなど緊急性の高い破産の案件は開始決定が出ているようです)。

また,4月中に既に書面決議期間が満了している個人再生の案件も,まだ再生計画認可決定は届いていません。

裁判所の業務停滞は,国民の権利保護にも影響を与えますので,これを機に対策が進むことを期待しています。

2 緊急事態宣言により,消費者金融やクレジット会社も業務を縮小しており,返済が遅れた場合の督促も厳しくなかったと聞いていますが,今後は通常業務に戻りますので,緊急事態宣言前の状態に戻ると思います。

消費者金融やクレジット会社から借り入れがある方で,新型コロナウイルスの影響で給料が下がったり,または失業してしまった場合,今後の返済をどうするかということを検討する必要があります。

債務整理には,業者と個別に交渉して返済条件を変更する任意整理や,裁判所で行われる個人再生,自己破産がありますが,新型コロナウイルスによる給料の減少や失業が一時的かどうかによっても手続の選択は変わってきます。

私が所属する弁護士法人心では,新型コロナウイルスによる収入減少等により借入金等の返済が困難になった方のご相談に対応するため,債務整理担当の弁護士を増強しております。お気軽にご相談いただければと思います。

借入金,クレジットカードの返済が困難になった方へ

⑴ 新型コロナウイルスの影響により収入が減ったため借入金やクレジットカードの返済が厳しくなり,債務整理の相談を希望されている方も増えているかと思います。

しかしながら,当法人柏駅法律事務所がある柏市等を業務範囲とする日本司法支援センター法テラス松戸では,非常事態宣言の発令にあわせて無料法律相談の配点を当面ストップするとのことであり,法テラスの民事法律扶助を利用して債務整理を行うためには,法テラスの民事法律扶助を取り扱っている弁護士に皆様が直接相談し,申し込みを行う必要があります。

当法人柏駅法律事務所では,民事法律扶助を利用した債務整理のご依頼を承っておりますので,お気軽にご相談いただければと思います。

以下では,債務整理の手段について,簡単にご説明します。

⑵ 新型コロナウイルスの影響で収入が減少したものの,それ以上の減少は見込まれず,返済に充てる余裕額がある場合は,任意整理または個人再生を検討いただくことになります。

任意整理は,消費者金融会社やクレジットカード会社と各別に交渉し,返済の条件を変更するものです。通常は,現在の残高を36~60回分割(業者によっては60回を超える回数での合意も可能です)で返済するという内容になり,将来利息は免除(0%)になります。任意整理を行うと,通常は,月々の返済額はある程度減ります。

任意整理を行った場合に想定される月々の返済額でも返済が厳しいと予想される場合は,個人再生を検討します。個人再生は裁判所で行われる手続ですが,法律の規定にしたがって減額された債務を原則36回(3年間),最長60回(5年間)で返済すれば,残額は免除されます。

例えば,負債が360万円で,預金等を合わせた財産が50万円の場合,100万円(小規模個人再生の場合)を3年間から5年間で返済することとなりますので,月々の返済額は1万7000円程度から2万8000円程度になります。任意整理の場合は,360万円の60回(5年間)払いでも月々6万円の返済になります。

⑶ 新型コロナウイルスの影響で収入が激減し,返済に充てられる金額を捻出できない方,および,今は返済に充てられる金額を捻出できても今後さらに収入の減少が見込まれ,近い将来捻出できなくなる可能性がある方は,自己破産を検討してください。

自己破産を行い,免責を許可する決定が確定すれば,税金等の非免責債権(破産してもなくならない負債)を除き,返済義務が免除されます。返済義務が免除されれば,負債について悩む必要がなくなりますので,仕事や生活の再建に注力することができます。

弁護士に債務整理を依頼すれば,消費者金融等からの催促がストップしますので,お気軽に当法人までご相談いただければと思います。

任意整理の動向

個人の方の債務整理には,主要な手段として自己破産,個人再生,任意整理があります。このうち,自己破産と個人再生は裁判所で行われる手続になり,任意整理は対象となる貸金業者またはクレジットカード会社と弁護士が個別に交渉を行う手続きとなります。

自己破産と個人再生は,手続について法律に規定があり,また各地方裁判所での実務(例えば自己破産手続における自由財産の拡張についての実際の取扱いや,同時廃止と管財事件の振り分けなど)についてもある程度明確になっていますので,その手続を採用した場合の結果について予測することは比較的容易です。
もちろん,小規模個人再生の場合に,どの債権者が再生計画案に反対するのかについてはやや不明な点はありますが,反対しない債権者がほとんどであり,反対する可能性が高い債権者についてはある程度ネット上に情報が出ています。そのため,債権者の反対により再生計画案が認可されないおそれがある場合は,給与所得者等再生または自己破産を選択することができます。

しかし,任意整理の場合,業者毎に個別に交渉しますので,任意整理についての業者の扱いに変更があった場合には,任意整理後の返済額が当初の想定より多くなる場合があります。ここ数年でも,任意整理による返済回数の上限を60回(5年間)に変更したクレジット会社がありましたし(それ以前は60回を超える回数での合意が可能でした),最近では,それまで84回払いで合意ができていたクレジット会社について,72回までと言われるようになりました。
例えば,負債額が100万円の場合,84回払いですと月々約1万2000円の返済となりますが,72回払いですと月々約1万3900円となります。

それほど差はないのではないかと思われるかもしれませんが,例えばクレジットで購入した自動車があり,生活に自動車が不可欠な場合,自己破産や個人再生を選択すると所有権留保条項により自動車はクレジット会社によって引き揚げられますので,自動車をどうしても残したいという場合は,任意整理を選択するしかありません。そのような場合,任意整理後の返済もギリギリであることがあり,1000円,2000円の違いが大きく影響します(なお,任意整理を行っても返済が難しいという場合は,私は任意整理での受任はお断りしています。)。
家族に借金や債務整理について知られたくないため任意整理を選択する場合も同様です。

最近は任意整理についての業者側の対応も厳しくなっていると感じることが多くなっていますので,相談者の方の収支状況からみて,厳しめの条件を前提として想定される任意整理後の返済額だと返済が厳しいと判断される場合は,任意整理での受任をお断りさせていただくことも増えるかと思います。

 

相続放棄について

1 相続放棄をする理由として典型的なのは,死亡した被相続人に多額の負債がある,というものです。

被相続人が死亡した後,財布の中を見ると,消費者金融へ返済した際のATMの明細が入っていたため,借金の存在が判明した,ということはよくあります。

借金があることが判明すると,急いで相続放棄の手続をしたくなるのではないかと思いますが,消費者金融やクレジットカード会社について負債がある場合は,一度弁護士に相談することをお勧めします。

というのも,消費者金融やクレジットカード会社は,かつて利息制限法の上限利率を超える約定利率で貸付を行っており,利息を払いすぎて過払になっている可能性があるからです。

仮に,約定利率を前提とした債務(約定残債務といいます)が100万円を超えていても,利息制限法の上限利率に引き直して計算すると,約定残債務がゼロになり,数百万円の過払い金が発生していたということも珍しくはありません。

また,被相続人が利息制限法の上限利率を超える利率で借り入れを行い,完済していた場合,引き直し計算をすれば確実に過払いが発生しています。

過払い金が発生している場合,消滅時効期間が経過していなければ,相続人は消費者金融業者等に対し,過払い金の返還を請求することができます。

弁護士にご依頼いただければ,弁護士は,被相続人の方が取引していた可能性のある業者について取引の有無や,過払い金発生の有無を調査することができます。

なお,取引の有無の調査や過払い金発生の有無の調査は,法定単純承認事由ではありませんので(法定単純承認事由とは,相続を承認したものとみなされる事実のことをいいます。例えば,被相続人の預金を引き出して自分の生活費に充てたような場合です。),調査の結果,過払金はなく負債が残っていたとしても,相続放棄は問題なく可能です。

2 相続放棄をする理由について,被相続人に負債がないとできないと誤解されている方もいらっしゃいます。

しかし,相続放棄は,例えば特定の相続人に相続財産を相続させるために行うことも可能ですし,単に相続手続きに関わりたくないからという理由で行うことも可能です。

弁護士法人心には相続放棄手続の経験が豊富な弁護士が所属していますので,お気軽にご相談ください。

放置 ダメ ゼッタイ

最近はArkadiaをヘビロテしてます!

東京簡易裁判所の民事の期日には,貸金業者等による訴訟の期日が多数入っています。私も東京簡易裁判所が管轄となっている過払金返還請求訴訟等で時々東京簡易裁判所に出廷しますが,私の案件が始まるまで,傍聴席で貸金業者等による訴訟を多数傍聴することになるのが通常です。期日が10時30分に設定されていても,呼ばれるのは11時過ぎ,ということもあります。
なお,一時期は簡易裁判所で多数の過払金返還訴訟の期日が行われていましたが,今では東京簡易裁判所でもほとんど見ません。

東京簡易裁判所の傍聴席で貸金業者等による訴訟(貸金返還請求訴訟等)を見ていると,被告,つまりお金を借りた側が出頭していないケースもよく見かけます。答弁書も提出しないまま出頭もしないと,第1回目の期日で審理は終了となり,通常は1週間後に判決が言い渡されることになります。
判決が確定すると強制執行が可能になりますので(判決に仮執行宣言が付されている場合は確定前でも可能です),訴訟を起こした貸金業者等が被告(借主)の勤務先を把握している場合は,給料を差し押さえることが可能になります。

給料を差し押さえられた場合,その差押えから逃れるためには,①遅延損害金等を含めた全額を返済する,②自己破産または個人再生を行う,③勤務先を退職する,という方法が考えられますが,③は非現実的で,①も親族等の援助がなければ通常は困難です。

とすると,②を選択するということになりますが,自己破産も個人再生も費用が必要となりますので,給料が差し押さえられた状態だと,その準備に時間がかかることになります。費用の準備に時間がかかると,なかなか申立てをすることができず,差押えをされた状態が継続することになります。

返済が困難になった場合は,すぐに弁護士に相談することが重要ですが,相談しないまま延滞を継続していた場合でも,訴訟を起こされた場合は直ちに弁護士に相談しましょう。弁護士に自己破産等を委任し,弁護士から受任通知を業者に対して送付すれば,提起された訴訟についてその後に判決が出たとしても,直ちに給料等を差押えらえることはまずありません。とくに自己破産の場合,弁護士からその旨の通知を受けた後に給料を差し押さえると,その差押えにより返済を受けた金額について破産手続において破産管財人によって否認されることがあり,そうなると業者は返済を受けた金額を破産財団に戻さなければならなくなります。

裁判所から届いた書類を放置することは ダメ ゼッタイ です。

 

返済シミュレーションについて

⑴ 銀行や消費者金融のウェブサイトには,返済のシミュレーションができるページを用意しているものがあります。そこで,試しに消費者金融であるSMBCコンシューマーファイナンス株式会社のウェブサイトにある返済シミュレーションを利用してシミュレーションをしてみました。

まず,借入金額を100万円,返済期間を3年間(36回払い),借入利率を利息制限法の上限利率である15%としますと,毎月の返済金額は3万4665円となりました。つまり,総返済金額は124万7940円(3万4665円×36回)となりました。
返済期間を5年間(60回払い)にすると,毎月の返済金額は2万3789円になりますが,返済総額は142万7340円(2万3789円×60回)に増えます。42万7340円が100万円の借り入れに対する利息の支払となります。

次に,借入金額を50万円,返済期間を3年間(36回払い),借入利率を利息制限法の上限利率である18%としますと,毎月の返済金額は1万8076円になります。返済総額は65万736円(1万8076円×36回)です。
返済期間を5年間(60回払い)にすると,毎月の返済金額は1万2696円となり,返済総額は76万1760円(1万2696円×60回)となります。50万円の借り入れに対し26万1760円を利息として支払うことになります。

⑵ では,50万円(借入利率18%)の借り入れが6本ある場合はどうなるでしょうか。なお便宜上,借入金額を300万円と入力してシミュレーションをします。

まず,返済期間を3年間(36回払い)とした場合は,毎月の返済金額は10万8457円になります。返済総額は390万4452円です。
返済期間を5年間(60回払い)とすると,毎月の返済金額は7万6180円となり,返済総額は457万800円となります。157万800円が合計300万円の借り入れに対する利息の支払いとなります。157万円もあれば,中古の小型車は余裕で購入できるでしょう。

⑶ 弁護士事務所に債務整理の相談に来られる方で,返済総額などをあらかじめシミュレーションして借り入れをなさっている方はほとんどいらっしゃいません。
しかし,借入を行う前にしっかりシミュレーションをしておけば,多重債務に陥る怖さもあらかじめ知ることができますので,借りたいという欲望を抑えることができるでしょう(一度契約すると,ATMで極度額まで借りれますので,預金を引き出す感覚で借り入れを行ってしまう方もいらっしゃいます)。

多重債務に陥る前に,一度,返済のシミュレーションを行ってみてください。

過払金返還請求における争点2

今回は,過払金返還請求で近時貸金業者側が争うようになってきた過払金の消滅時効について取り上げます。なお,以下の記載は本記事投稿時の民法を前提とした内容です(令和2年4月1日施行予定の民法改正により消滅時効についても内容が変わります)。

まず,過払金の消滅時効について判示したのは最高裁判所平成21年1月22日です。この判決は,「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」と判示しました。

つまり,過払金の消滅時効は,原則として,完済している場合は完済時,完済前の場合は最後の取引時(貸付または返済)から進行します。

上記のように判断した理由について,最高裁は次のように述べています。

「過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)を行使することは通常想定されていないものというべきである。」

なお,過払金充当合意とは,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意です。

つまり,最高裁は,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り過払金返還請求権を行使することは期待できないから,過払金の消滅時効の起算点を最後の取引時としたのです。

この,「新たな借入金債務の発生が見込まれる限り」という部分に貸金業者が目を付け,主張するようになったのが,貸付停止措置を取った時点を起算点とする消滅時効の主張です。貸付停止措置により,新たな借入金債務の発生が見込まれなくなったから,その時点から過払金返還請求権の行使が期待できるようになった,という主張です。ただし,通常は,「貸付停止措置」という名の明確な措置があるわけではなく,貸付限度額(極度額)をゼロにすることを貸付停止措置と呼ぶ貸金業者が大半です(借主の信用状態が悪くなったから貸付限度額をゼロにし,貸付停止措置を取ったなどと主張してきます)。

貸付限度額をゼロに変更された場合にも,その後に増額される可能性がありますので,このような貸金業者側の主張が認められることはほとんどないですが,信用状態がかなり失墜している場合に貸金業者側の主張が認めらている下級審判例もあります。

過払金の請求は最後の取引から10年は大丈夫だと思っている方もいらっしゃるかと思いますが,念のため,最後の借入日がいつになっているかもチェックし,早めに弁護士にご相談ください。

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給与所得者等再生について

個人の方の債務整理の手段としては、主なものとして、任意整理、個人再生およ
び自己破産があります。このうち、件数的に最も多いのは任意整理で、その次が
自己破産です。個人再生はそれほど件数は多くありません。

個人再生の件数が少ないのは、個人再生を行うには安定した収入が必要であり、
また、個人再生をやらなければならないほど負債が増大している(または収入が
減っている)方の場合、通常は自己破産の要件(支払不能)も満たしますので
(厳密には、個人再生の要件と自己破産の要件は異なります)、租税公課等の非
免責債権を除くすべての負債が免責される自己破産を選択しがちになるからだと
思われます(個人再生だと、一定金額を返済する必要があります)

また、個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生がありますが、大多数を
占めるのは小規模個人再生で、給与所得者等再生はほとんどありません。給与所
得者等再生があまり使われていないのは、給与所得者等再生の場合、小規模個人
再生よりも返済額が多くなるのが通常だからです。

小規模個人再生では、再生計画で返済する金額(最低弁済額)は、①債権額基準、
②清算価値基準のいずれかで決まります。例えば、再生債権の総額が450万円
で、清算価値が90万円の場合、最低弁済額は①では100万円、②では90万
円となり、①の100万円が最低弁済額になります。
しかし、給与所得者等再生では、③可処分所得の2年分、という基準が加わりま
す。この③可処分所得の2年分が、比較的高額になるというわけです。

それでは、この給与所得者等再生を使うケースについて以下説明したいと思いま
す。

(1)小規模個人再生だと書面決議で再生計画案が否決される可能性がある場合
小規模個人再生では、再生計画案について、再生債権者による書面決議が行われ
ます。例えば、再生債権者がA社、B社、C社の3社で、それぞれの債権額を3
00万円、150万円、100万円とします。この場合において、A社が書面決
議で再生計画案に反対すると、再生計画案は否決されることになります。A社の
債権額は、総債権額の過半数を占めているからです。

他方、給与所得者等再生では、再生債権者による書面決議はありません。再生計
画案について裁判所が認可を出せば、再生債権者はそれに従わざるを得なくなり
ます。

そこで、小規模個人再生では書面決議で再生計画案が否決される可能性がある場
合は、給与所得者等再生を選択することになります。

(2)③よりも①または②の方が高額の場合
給与所得者等再生では、最低弁済額の基準として③可処分所得の2年分が加わっ
ていますが、この可処分所得の2年分よりも①債権額基準または②清算価値基準
による金額の方が大きい場合は、給与所得等再生を検討することになります。小
規模個人再生では、再生計画案について書面決議がありますので、再生計画によ
る返済金額が変わらないのであれば、書面決議のない給与所得者等再生を選択し
た方が安全だからです。

ただし、③が①または②よりも低額になるのはレアケースだと思われます。

給与所得者等再生の詳細につきましては,弁護士にご相談ください。

消費税の増税にともなう予納金の増額について

令和元年(2019年)10月1日から,消費税の利率が10%になります。

消費税の増税にともない,官報広告に必要となる手数料も増額となりますので,破産手続や個人再生手続において,官報広告費として納付する予納金も増額になります。

例えば,千葉地方裁判所(支部も含みます)の破産同時廃止手続では,予納金は1万1644円から1万1859円へ値上げになります。個人の方の管財手続では,1万8205円から1万8543円に値上げとなります。

なお,官報公告の手数料は本年4月にも値上げしており,それにともない予納金も値上げされていました。上記の1万1644円(同時廃止手続)および1万8205円(個人の管財手続)は,4月の値上げ後の金額です。

ところで,破産手続では,同時廃止の場合を除き,上記の官報広告費としての予納金のほかに,破産管財人に引き継ぐ予納金を準備する必要があります。千葉地方裁判所(支部も含みます)では,個人または法人の少額管財手続では,この予納金として20万円を準備する必要があります。

少額管財手続では,破産管財人の業務として相当額の出費が必要となるものは想定されておらず,この20万円の予納金は,破産管財人の報酬に充てることが予定されています。

なお,千葉地方裁判所(支部を含みます)では,個人再生手続で個人再生委員が選任される場合,住宅資金特別条項を定める手続きの場合は20万円,定めない手続の場合は15万円必要となりますが,この金額も再生委員の報酬に充てられるものです。

ところで,私は消費税が5%のときから弁護士をしており,千葉地方裁判所松戸支部で破産管財人や個人再生委員を担当していますが,官報広告費としての予納金は消費税の増税にともない値上げされているものの,少額管財手続の引き継ぎ予納金や個人再生手続での個人再生委員の費用は20万円ないし15万円に据え置かれたままです。10%への増税後も,金額は同じです。

20万円が破産管財人ないし個人再生委員の報酬として支給される場合,これは消費税込みの金額となりますので,消費税が5%の場合の税抜きの金額は19万477円,8%の場合は18万5184円,10%の場合は18万1819円になります。

 

法律相談について

1 弁護士が行っている法律相談は,法律に関係するトラブルに巻き込まれた方など,法律による対応が必要な方を対象として行っているものです。

例えば,離婚の場合,親権,養育費,慰謝料,財産分与などの離婚条件を決める必要があります。これらの条件は,まずは法律に則って検討しなければなりませんので,弁護士が行っている離婚相談の対象になります。

他方,配偶者から離婚を求められた方が,離婚を回避したい,という趣旨で法律相談を希望する場合,現時点で配偶者が離婚訴訟を提起した場合に判決で認められるかどうかを検討する,という点では法律の問題になりますが,離婚を回避したいという方のほとんどは,離婚訴訟を起こされた場合のことではなく,配偶者と仲良くする方法を知りたい,という趣旨で弁護士に法律相談を申し込んでいるのではないかと思います。

このような場合,仲良くする方法というのは事実上の問題で,法律で解決できる内容ではありません。このような内容の相談では,私は個人的な意見・感想を話したり,家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満調停)を説明するくらいのことしかできません。

2 法律相談は,法律に関係するトラブルに巻き込まれた方ご本人(当事者)を対象として行うものです。もちろん,刑事事件の法律相談で,ご本人が逮捕・勾留されている場合はご本人が弁護士事務所に来ることはできませんので,ご家族を対象として相談を行うことになります(その後,弁護士が警察署等でご本人と接見して事情を聴くことになります)。

しかし,離婚相談の場合,離婚の当事者ではなく,当事者のご両親(またはその一方)から相談の申し込みがあり,当事者は相談に来る予定(意思)はない,ということがあります。

当事者のご両親は,弁護士から説明を受けてそれを当事者に伝える,という趣旨で法律相談を申し込んでいることが多いですが,この場合,伝言ゲームの危険性があります。つまり,弁護士の説明をご両親が誤解して,または歪めて当事者に説明する危険があるということです。ご両親のみが相談を希望している場合,離婚について当事者である息子または娘と意見が対立していることがあり,そのようなケースでは,弁護士の説明が歪められて当事者に伝えられる危険が生じやすくなります。

また,離婚の条件等を検討するためには,当然ですが,当事者から具体的な事情を聴かなければなりません。

そのため,私が担当している離婚相談では,当事者が来所しないご相談は原則としてお断りしています。

裁判傍聴と記録の閲覧

民事訴訟や刑事訴訟の審理は,原則として公開の法廷で行われます。日本国憲法82条1項は,「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と規定しています。公開されている審理は,どなたでも裁判所で膨張することが可能ですが,傍聴席には限りがありますので,傍聴人が多数見込まれる事件では,抽選が行われることがあります。東京地方裁判所では,ウェブサイトで傍聴券交付情報を公開しています。

私が過去に担当した訴訟事件では,傍聴席が満席になったことはありませんが,裁判員裁判ではほぼ満席になった事件もありました。また,私が担当した松戸の裁判所の刑事裁判では,傍聴席が混雑することはほとんどなく閑散としていましたが,学生さんが社会科見学で傍聴に来ていたときは,傍聴席の半分程度が埋まっていました。自白事件でしたのであまり勉強にはならなかったと思いますが。

審理,判決が公開の法廷で行われるということは,提出された書面や証拠も公開されるということを意味します。民事訴訟法91条1項は,「何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。」と定めています。当事者やその代理人弁護士だけが閲覧できる,というわけではありません。ただし,訴訟記録の謄写は,訴訟の当事者または当該訴訟について利害関係のある第三者のみ行うことができます(民事訴訟法91条3項)。

私が担当している離婚訴訟や慰謝料関係の訴訟では,当事者のプライバシーに関わる書面や証拠が提出されることがあります。このような場合は,プライバシーに関わる書面や証拠の閲覧制限を裁判所に申し立てることなります。民事訴訟法92条1項は,「次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写することができる者を当事者に限ることができる。」と規定し,その1号で「訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され、又は記録されており、かつ、第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること。」と定めています。

私が過去に被告側の代理人として担当した慰謝料請求訴訟では,プライバシーに関わる写真やメール等が原告側から証拠として提出されたこともありましたので,閲覧制限を申し立てたことが2回ほどあります(いずれも認められました)。

個人再生のご相談について

今回は,弁護士に個人再生を相談いただく際に,確認,準備いただきたい点についてご説明します。

① 個人再生は,法律のルールにしたがい圧縮された債務を,再生計画で定められた期間で返済する手続きです。返済期間は原則3年で,特別の事情があれば5年まで延長可能です。

つまり,個人再生手続きは,破産手続と異なり返済をすることを前提としますので,毎月どの程度の金額を返済に充てることができるか,弁護士へのご相談の前にチェックしていただく必要があります。

とくに,住宅ローンがあり,自宅を残すために住宅資金特別条項の利用を希望されている方の場合,配偶者や子ども等の家族がいる場合がほとんどですので,子どもの成長,進学等で増えることが想定される支出も考慮して返済に充てることができる金額を計算していただく必要があります。

② 個人再生手続きでは,住宅資金特別条項を利用することにより,住宅ローンの支払いは継続しながら,その他の負債(カードローン,カードショッピング等)を整理することが可能です。これにより,居住する自宅を残すことが可能になります。

この住宅資金特別条項を利用するためには,一定の要件が必要となりますので,その確認のため,ご相談の際に住宅ローンの契約関係書類,登記事項証明書(不動産登記)をご準備いただくとスムーズにご相談が進みます。例えば,住宅に住宅ローン以外の債務の抵当権(例えば,消費者金融会社が提供している不動産担保ローンなど)が設定されている場合は,住宅資金特別条項を利用することはできませんが,これは登記事項証明書により確認でいます。

また,住宅ローンとしての借り入れであっても,例えば借入金額3500万円のうち500万円が住宅購入の際の諸費用(仲介手数料,登記費用等)の支払いや家財道具(電器,カーテン等)の購入費用に充てられている場合,この500万円の部分は住宅資金にはあたらないため,住宅資金特別条項を利用できるかどうか,慎重に検討する必要があります。

住宅ローン契約関係の書類には,住宅ローンとして借り入れた金銭の使途が記載されていますので,その書類をご用意いただければ,初回のご相談の際に確認が可能になります。

個人再生委員について

1 個人再生について,千葉地方裁判所(本庁,支部)では,弁護士が代理人として申立てを行う場合は,原則として再生委員は選任しないという扱いになっています。弁護士が代理人になっていない場合(司法書士が書類を作成して申立てを行う場合など)は,個人再生委員(弁護士)が選任され,住宅資金特別条項を利用する場合は20万円,利用しない場合は15万円の再生委員費用が必要となります。なお,この費用の支払いについては分割での支払いが認められています。

2 弁護士が代理人として申し立てた場合でも,例外的に個人再生委員が選任されることがあります。選任される基準については,千葉地方裁判所が公表しているわけではありませんので推測になりますが,当該事案に何らかの法律上の問題があり,手続を進めるにあたって個人再生委員の意見も必要な場合に選任が行われているように見受けられます。

なお,個人再生委員の主な業務は,再生債務者の財産状況等をチェックし,手続について裁判所に意見書を提出する(例えば,「再生計画案の認可が相当である」など)ことです。

3 個人再生手続きでは,再生債権を確定し,それに基づいて再生計画案を作成することがメインになります。再生債務者は,その再生計画案に従って返済をすることになりますが,再生債務者の収入状況等にかんがみその返済が厳しいということであれば(これを「履行可能性がない」といいます),再生計画は認可されません。

特に,住宅資金特別条項を利用する個人再生を行う場合,自宅を残すためにある程度無理をして個人再生を申し立てているケースもありますので,そのような場合は,弁護士が代理人に就いていても,履行可能性を厳しくチェックするために個人再生委員が選任される可能性が高くなります。

4 個人再生委員は,再生手続の開始決定がなされる前に選任されます。個人再生委員が選任されると,個人再生委員の事務所で再生委員面接が行われます。面接では,申立書や添付資料(銀行口座の通帳など)の内容や,当該事案で法律上問題となっている点について再生委員から質問等が行われることになります。

再生委員面接を経て,再生手続を開始することについて問題ないと判断した場合は,個人再生委員は,裁判所に対し再生手続開始を相当と考える旨の意見書を提出し,それに基づいて裁判所は再生手続の開始決定を出すことになります。

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破産事件における任意売却

私は千葉地方裁判所松戸支部から依頼を受けて破産管財人の業務を行っていますが,その際,破産者の方が所有する不動産を売却することがあります。
今回は,自己破産をする方が不動産を所有している場合について,その処理の仕方についてお話ししたいと思います。なお,以下の記述は,私が主に申立てを行っている千葉地方裁判所松戸支部の取り扱いを前提にしています。

まず,自己破産をする方が不動産を所有しているケースで最も多いのは,住宅ローンがあり,その住宅ローン債権者の抵当権が当該不動産に設定されているケースです。
この場合,住宅ローンの残額が不動産の査定額を一定程度以上上回っており,かつ自己破産をする方に少額管財となるための基準をみたす財産(20万円を超える預貯金等)がなければ,同時廃止で進めることが可能です。

他方,住宅ローンの残額が不動産の査定額を上回っているものの(これをオーバーローンといいます),その差が一定程度以下の場合は,他に20万円を超える預貯金等の財産がない場合でも,少額管財手続となり(破産管財人に引き継ぐ予納金として20万円が必要になります),破産管財人が任意売却を試みることになります。

ただし,自己破産の申立前に任意売却手続を行って売却を完了し,破産申立時には何らの財産もないという場合は,同時廃止で進めることが可能です。この場合は,売却手続きについて事前の裁判所のチェックがなされていないことになりますので(破産管財人が売却する場合は,裁判所の許可が必要です),適正な売却価格になるよう,慎重に進める必要があります。適正な売却価格でなく,住宅ローン残高よりも高い金額で売れる可能性があったと裁判所が判断した場合は,破産管財人による調査が必要であるとして少額管財になる可能性があります。

自己破産手続を検討している方で,任意売却も視野に入れている方は,必ず弁護士に相談してから不動産業者に依頼するようにしてください。

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破産管財手続における郵便物の転送

破産管財手続では,破産手続開始から原則として手続終了までの間(原則と記載したのは,例えば債権者集会が複数回行われるケースでは,不要であれば第1回の債権者集会の終了をもって転送をストップすることもあるためです),破産者宛の郵便は破産管財人に転送されます。通常の郵便のほか,レターパックも転送されます。そのため,通信販売でCDや本を購入する際,配送方法がレターパックだと破産管財人に転送されてしまいます。また,ゆうメールは転送の対象外ですが,誤って転送されることもありますので注意が必要です。

転送されるのはあくまで破産者宛の郵便ですので,破産者の同居の家族宛の郵便は転送されません。同居の家族宛の郵便が間違って破産管財人に転送されても,破産管財人は封を開けてその内容物を確認することはできません。

破産者の郵便が破産管財人に転送されるのは,まず第一に,破産管財人が破産者の財産を調査できるようにするためです。破産管財人には弁護士が選任され,私も何件か担当したことがありますが,破産者の郵便の調査により,破産者が忘れて放置していた証券口座が見つかったことが何回かあります。そのため,弁護士に自己破産を依頼する際は,必ずすべての銀行口座,証券口座等を洗い出し,弁護士に申告してください。

ただ,今のようなネット社会では,金融機関等からの連絡はメールやウェブサイトのマイページで完結することも多くなっていますので,郵便物の調査のみでは不十分になってきているというのが実情です。私も,疑わしい事案では金融機関等に直接問い合わせて口座の有無を確認しています。

このように,郵便の転送の第一の目的は破産管財人による破産者の財産調査になりますが,免責不許可事由の調査でも役に立つことがあります。例えば,転送郵便でパチンコ店からのダイレクトメールが定期的に届くことがありますが,このようなダイレクトメールはパチンコ店で何らかの手続きをしないと届きませんので,破産者がパチンコをしていたという推測が働きます。パチンコや競馬などをした経験がある場合は,仮に借金とは関係ないとしても,自己破産を依頼する際に弁護士に申告するようにしてください。

 

 

相続放棄について2

今回も,相続放棄の手続について弁護士にご相談,ご依頼をいただく場合の注意点などについてご説明します。

前回は相続人についてご説明しましたので,今回は相続財産についてご説明します。

(1)相続財産とは,相続によって相続人に引き継がれることになる権利義務関係です。「義務」とあるように,借金(借りたお金の返済義務)も相続財産になります(いわゆるマイナスの財産です)。

被相続人が受取人になっている死亡保険金も,被相続人の死亡と同時に被相続人が保険金請求権を取得し,それを相続人が相続することになりますので,相続人が手続きをして保険金を受領してしまうと,法定単純承認となり相続の放棄はできなくなります(民法921条1号)。

他方,例えば被相続人の妻が受取人になっている死亡保険金の場合,被相続人の死亡により被相続人の妻が直接保険金請求権を取得することになりますので,これは相続財産にはあたりません。

例えば,被相続人の借金が500万円あり,他方で被相続人が受取人を被相続人の妻とする生命保険(死亡保険金額1000万円)に加入していた場合,妻は,相続放棄をしても,1000万円の保険を受け取ることができます(相続放棄をしているので500万円の借金は相続しません)。

(2)上述のとおり,相続財産にはマイナスの財産も含まれますが,被相続人にマイナスの財産があるかどうか不明な場合もあります。この場合は下記のように対処してください。

まず,被相続人がある特定の貸金業者から借り入れていることは間違いないが(例えば財布にクレジットカードやローンカードが入っていた場合),その金額が不明の場合,法定相続人であれば,その業者に借入金残額の照会をすることが可能です。

また,業者名が分からない場合でも,銀行や消費者金融,信販会社(クレジットカード会社)からの借入等であれば,信用情報を調べることで業者が判明します。著名な信用情報機関にはJICC,CICおよびKSCがありますが,この3つの信用情報に業者が記載されていれば,その業者に照会することで借り入れ等の有無,金額が判明します。

他方,個人からの借り入れや,借入等以外の債務(例えば損害賠償債務)は信用情報を調べてもわかりませんので,被相続人が遺した通帳や書類等を丹念に調べる必要があります。例えば,特定の個人に対する振り込みが定期的に通帳に記録されている場合,当該個人からの借入金の返済である可能性があります。

 

相続放棄について

私は昨年後半から柏駅法律事務所で相続の相談を担当していますが,数多くご依頼をいただいている案件は,相続放棄の申述についての手続代理です。
そこで,今回から次回にかけて,相続放棄について弁護士にご相談,ご依頼をいただく場合の注意点などをいくつかご説明したいと思います。

1 相続人について
相続人には二つの系統があり,一つが配偶者相続人で,もう一つが血族相続人です。
配偶者相続人とは,文字通り死亡した被相続人の配偶者です。被相続人が死亡した時点で「配偶者」でなければなりませんので,死亡前に離婚していた場合は,「元妻」または「元夫」は相続人にはなりません。
日本では一夫一婦制が採用されていますので,配偶者相続人は一人となり,被相続人の配偶者は必ず相続人になります(もちろん相続欠格等により相続権を失うことはあり得ます)。
もう一方の血族相続人は,第1順位が被相続人の子(死亡している場合は代襲相続人である被相続人の子の子。被相続人の子の子も死亡している場合は被相続人の子の子の子,つまり被相続人のひ孫が相続人になります),第2順位が被相続人の直系尊属,第3順位が被相続人の兄弟姉妹(死亡している場合はその兄弟姉妹の子)で,被相続人と血のつながりのある自然血族のみならず,養子縁組により養親・養子の関係となった法定血族も含まれます。
血族相続人については順位がありますので,第1順位の相続人が存在し,かつ相続放棄をしていない場合は,第2順位以下の血族は相続人になりません。例えば,第1順位の相続人が3人存在する場合,3人全員が相続放棄をしない限り,第2順位の血族は相続人になりません。
この場合,第1順位の相続人全員が相続放棄の申述を家庭裁判所に対して行い,全員の申述が受理された時点で第2順位の血族が相続人となりますので,第2順位の血族は,第1順位の相続人全員の相続放棄の申述が受理された後に相続放棄の申述を行うことになります。
なお,第2順位の相続人(直系尊属)は,親等の近い者から相続人になります。具体的には,被相続人に子がいない,または全員相続放棄をした場合,被相続人の両親(一親等)が相続人になり,両親が被相続人の死亡前に死亡していたり,相続放棄をした場合は,二親等の祖父母が相続人となります。第3順位の血族(被相続人の兄弟姉妹)が相続放棄を行うには,被相続人の直系尊属全員が死亡,または相続放棄をしていることが前提となります。

次回に続きます。

※なお,同時死亡の場合は相続関係は発生しません。例えば,父と子が飛行機事故で同時に死亡した場合,その子は父の相続人になりませんし,その子に第1順位の相続人が存在しない場合に父がその子の相続人になることもありません。

 

破産・再生についての最新情報

1 予納金の値上げについて

自己破産や個人再生を行う場合,所定の事項が官報で公告されます。官報で公告を行う場合,所定の手数料(官報公告掲載料金)が必要となりますが,自己破産または個人再生を申し立てた場合,その手数料を裁判所に予納する必要があります。

この官報公告掲載料金ですが,平成31年4月から値上げされますので,それにあわせて裁判所に納付する予納金も値上げされます。

千葉県の東葛6市(柏市,松戸市,鎌ヶ谷市,野田市,流山市,我孫子市)を管轄する千葉地方裁判所松戸支部では,自己破産(同時廃止)の場合の予納金は,従来は1万584円でしたが,値上げにより1万1644円になります。

ちなみに,千葉地方裁判所松戸支部では,少額管財の引継予納金(管財人に引渡す現金)は現在のところ20万円ですが,これは,消費税が5%の頃と変わりません。

少額管財の引継予納金は基本的に管財人の報酬に充てられるものですが,仮に実費等一切かからず20万円すべてが管財人報酬になった場合,その20万円には消費税も含まれますので,税率が5%だとすると20万円のうち9523円が消費税となりますが,税率が8%ですと1万4814円が消費税となります。今後税率が10%に引き上げられた場合,引継予納金が20万円のまま据え置かれると,20万円のうち1万8181円が消費税となり,8%のときと比べて管財人の報酬は目減りすることとなります。

私は千葉地方裁判所松戸支部の破産管財人を引き受けていますので,管財人の立場からすると,消費税率の引き上げに合わせて引継予納金も引き上げてほしいと思うこともありますが,破産を申し立てる方の代理人の立場からしますと,予納金の準備が大変な方もいらっしゃいますので,このまま20万円で据え置いてほしいという気持ちもあります。

2 運用の変化について(千葉地方裁判所松戸支部)

千葉地方裁判所松戸支部では,平成30年4月の裁判官の異動により,破産,個人再生を担当する裁判官が交代しました。

そのため,以下の点で運用に変化が生じています。

⑴ 破産の債権者集会の所要時間

平成30年3月までは,債権者集会は通常5分程度で終了していましたが,現在の担当裁判官は,債権者集会で管財人や破産者の方に対し質問等を行うことが多く,所定の10分を超えることもまれではなくなっています。

そのため,開始予定時刻が10分から20分程度遅れることもあります。

⑵ 個人再生委員の選任

千葉地方裁判所松戸支部では,弁護士が代理人として個人再生の申立てを行う場合は,原則として個人再生委員は選任されませんが,近時,例外的に選任されるケースが増えているとの話があります。

個人再生委員が選任されると,費用(個人再生委員の報酬に充てられます)として20万円(住宅資金特別条項を利用する場合。利用しない場合は15万円です。)必要となりますので,注意が必要です。

任意整理の相談について

今回は任意整理の相談について,注意していただきたい点を述べたいと思います。

任意整理は個人の方が行う債務整理の手段の一つで,貸金業者やクレジットカード会社と個別に交渉して返済方法を取り決めるという手続きです。事件類型としては,交渉事件に該当します。自己破産や個人再生とは異なり,裁判所で行われる手続ではないですので,定期的に柏市に出張に来られる方が柏駅法律事務所で相談してそのまま任意整理を依頼することもできます(自己破産等はお住まいの住所地を管轄する地方裁判所に申し立てる必要がありますので,九州にお住まいの方の自己破産や個人再生を柏駅法律事務所で受任することは基本的にできません)。

交渉事件を弁護士に依頼する場合,着手金として最低10万円(プラス消費税)はかかるのが通常ですが,任意整理の場合,交渉の相手方は貸金業者かクレジットカード会社(信販会社)であり,交渉内容もある程度定型化されていますので,1社につき数万円程度で受任している弁護士が多数だと思います(なお,利息制限法の定める制限利率で引き直し計算を行った結果,過払いになっていて,その金額を回収した場合は,別途弁護士報酬の支払が必要になります)。弁護士法人心でも,任意整理は1社あたり3万9800円(税別)で受任しており,現在は減額報酬はいただいておりません。

この任意整理は,返済のための借り入れを繰り返して負債が増大したり,クレジットカードを使いすぎてしまったりしたために,月々の返済金額が返済可能額(毎月の収入から家賃や食費などの生活費を差し引いた金額です)を上回るようになってしまった場合に,月々の返済金額を減らすために行うものです。
(なお,月々の返済金額が返済可能額を超えていない場合,つまり返済には問題がない場合でも,借り入れ当初の利率が利息制限法の制限利率を超えており,制限利率で再計算すれば債務総額が減る場合に,債務総額を減らしたうえで返済方法を取り決める手続きも任意整理となります。)

そのため,月々の返済には問題がないにもかかわらず,例えば将来発生する利息をカットしたいから任意整理をしたい,という依頼については,受任することはできません。
利息の支払は,金融業者と合意したことにより発生する契約上の義務であり,月々の負担を減らす等,合理的な理由がないにもかかわらず,その契約上の義務を免れることを目的とした交渉を法律のプロフェッショナルである弁護士が引き受けるわけにはいかないからです。

ただし,現時点では返済に問題はないものの,例えば転職により3か月後以降から収入が減るとか,または子どもの学費等避けられない継続的な出費が3か月後から生じるなどの事情により,近い将来に返済が困難になることが明らかな場合に,前もって任意整理を行うことは可能です。

任意整理等の債務整理の種類についてはこちらもご覧ください。