債務整理の注意点

今回は、私がメインで取り扱っている個人の方の債務整理について注意すべき点をいくつか説明したいと思います。

今回は任意整理を取り上げます。

任意整理という案件は、民事交渉の一種で、各金融業者と個別に交渉して返済条件を変更する債務整理の手段です。返済条件を変更することで、月々の返済金額を減らし、また利息(将来利息)の負担を免れることで完済までの目途を付けることができます。ただ、最近では、任意整理を行った場合でも将来利息を付加する業者も増えており、また、負債額が大きくても分割回数を(例えば60回に)制限している業者も増えてきているため、任意整理後の方が月々の返済額が増えてしまうケースも増えています(例えば、負債額が300万円で、任意整理前の返済額が月々3万円だった場合、分割回数の上限が60回ですと月々5万円となるため、任意整理前よりも月々の返済額は2万円増えます)。

任意整理の内容は、業界による長年の実務慣行により定型化しつつありますので、任意整理の弁護士費用は、通常の民事交渉事件よりも低額であることが通常です。

逆に言いますと、任意整理を行っている業界とは関係のない債権者(例えば個人からの借り入れや、金融業者ではない業者に対する負債)については、任意整理の実務慣行が適用されませんので、任意整理の対象とはならず、仮に返済条件を変更等する内容の交渉を弁護士に依頼する場合は、通常の民事交渉となり、費用も任意整理より高額になります。

なお、金融業者であっても、任意整理に全く応じない業者もありますので、これらの業者については任意整理を行うことはできず、自己破産か個人再生を検討することになります。公的な、または公益的な貸付機関も原則として任意整理の対象にはなりません(これらの公的ないし公益的な貸付機関はもともと貸付利率が低く、月々の返済額も少ないため、仮に任意整理ができたとしても大きな効果は見込めません)。

私の印象ですが、任意整理については和解可能な条件を以前より厳しくしている業者が増えているため、負債額が比較的多い場合は、支障がない限り(例えばローンで購入し所有権が留保されている車がある場合、個人再生を行うと車は引き揚げられることになります)、個人再生を選択したほうがよいのではないかと思っています。