私は昨年後半から柏駅法律事務所で相続の相談を担当していますが,数多くご依頼をいただいている案件は,相続放棄の申述についての手続代理です。
そこで,今回から次回にかけて,相続放棄について弁護士にご相談,ご依頼をいただく場合の注意点などをいくつかご説明したいと思います。
1 相続人について
相続人には二つの系統があり,一つが配偶者相続人で,もう一つが血族相続人です。
配偶者相続人とは,文字通り死亡した被相続人の配偶者です。被相続人が死亡した時点で「配偶者」でなければなりませんので,死亡前に離婚していた場合は,「元妻」または「元夫」は相続人にはなりません。
日本では一夫一婦制が採用されていますので,配偶者相続人は一人となり,被相続人の配偶者は必ず相続人になります(もちろん相続欠格等により相続権を失うことはあり得ます)。
もう一方の血族相続人は,第1順位が被相続人の子(死亡している場合は代襲相続人である被相続人の子の子。被相続人の子の子も死亡している場合は被相続人の子の子の子,つまり被相続人のひ孫が相続人になります),第2順位が被相続人の直系尊属,第3順位が被相続人の兄弟姉妹(死亡している場合はその兄弟姉妹の子)で,被相続人と血のつながりのある自然血族のみならず,養子縁組により養親・養子の関係となった法定血族も含まれます。
血族相続人については順位がありますので,第1順位の相続人が存在し,かつ相続放棄をしていない場合は,第2順位以下の血族は相続人になりません。例えば,第1順位の相続人が3人存在する場合,3人全員が相続放棄をしない限り,第2順位の血族は相続人になりません。
この場合,第1順位の相続人全員が相続放棄の申述を家庭裁判所に対して行い,全員の申述が受理された時点で第2順位の血族が相続人となりますので,第2順位の血族は,第1順位の相続人全員の相続放棄の申述が受理された後に相続放棄の申述を行うことになります。
なお,第2順位の相続人(直系尊属)は,親等の近い者から相続人になります。具体的には,被相続人に子がいない,または全員相続放棄をした場合,被相続人の両親(一親等)が相続人になり,両親が被相続人の死亡前に死亡していたり,相続放棄をした場合は,二親等の祖父母が相続人となります。第3順位の血族(被相続人の兄弟姉妹)が相続放棄を行うには,被相続人の直系尊属全員が死亡,または相続放棄をしていることが前提となります。
次回に続きます。
※なお,同時死亡の場合は相続関係は発生しません。例えば,父と子が飛行機事故で同時に死亡した場合,その子は父の相続人になりませんし,その子に第1順位の相続人が存在しない場合に父がその子の相続人になることもありません。