新型コロナウイルスについての医療関係者の発言をツイッター等でよく見かけますが、その発言について、同じ医療関係者から、発言者の専門外の内容についての発言で間違いがある、などといった指摘がなされていることがあります。
また、多数の病院を回ったものの身体の不調の原因がわからず、ようやくたどり着いた専門医の診察で不調の原因が分かった、というドキュメンタリー番組もありました。
例えば、高熱が出た場合に近所の整形外科に診察を受けに行く方はいないと思いますので、医師には専門分野があるということは広く認識されていると思います。
他方、弁護士については、専門性について一般に認識されているとは言えません。これは、多くの法律事務所で、取扱分野を広く網羅して表示していることにもよるのかもしれません。
たしかに、弁護士は、それほど取り扱ったことのない種類の案件でも、専門家向けの解説書等を参照することで、ある程度の処理をすることは可能です。
しかし、その分野を多く取り扱っている弁護士と比較すると、処理のスピードは類型的に遅くなるでしょうし、忙しい弁護士であれば解説書を丹念に読み込む時間もありませんので、当該分野について専門性を有しない(あまり取り扱った経験がない)弁護士に依頼すると、経験の多い弁護士に依頼する場合と比較し、不利益が生じやすいとは言えるでしょう。
これは極端な例ですが、車(四輪車)対オートバイの交通事故の過失相殺について、依頼を受けた弁護士が車(四輪車)対車(四輪車)の過失相殺の表を見ていたケースもありますし(見るべきは四輪車対単車の過失相殺の表です。交通事故をそれなりの件数扱っている弁護士であれば、このようなことはあり得ません)、また、個人再生の委任契約を数年後に弁護士から解約された方の相談について、その解約された理由を聞くと、税金の滞納が解消されていないから申立てができない、というものでした(税金滞納があっても、分割納付の合意ができており履行可能性があれば、手続きを進めることができます。その方は分割納付の合意があり分割納付をしていました)。
相談の際は、同種案件についてその弁護士がどの程度扱ったことがあるのかも聞いてみるとよいと思います(なお、その弁護士が若手で経験が少なくても、同じ法律事務所の上の弁護士が多数の経験を有しており、その弁護士の指導監督を受けることができる場合は、適切な処理を期待できますので、ケースバイケースです)。