国選弁護人

私は2010年5月から柏市で弁護士をしていますが,当時はまだ千葉地方裁判所松戸支部の管轄である東葛6市(柏市,松戸市,流山市,野田市,我孫子市,鎌ヶ谷市)に事務所を構える弁護士数は比較的少なく,結構な頻度で被疑者国選が配点されていました。なお現在は私は被疑者国選弁護人の担当をしていませんが,担当している弁護士に聞くと,1ヵ月に1回程度配点されているようです。

千葉県弁護士会松戸支部での被疑者国選の配点は,担当者が掲載されている名簿の順番で,配点される際に配点を受ける意思を確認されることはなく,いわば強制配点でした。もちろん,事前に配点そのものを停止することは可能ですが,弁護士会の事務局への連絡が必要で(もちろん事務局は平日しか業務を行っていません),そのため,日曜だったと思いますが,突然高熱が出たため病院の日曜診療を受けた日に配点されたことがあります。

最近,SNS上で,国選弁護の場合に,逮捕勾留された被疑者・被告人から自宅に残してきたペットの餌やりを頼まれた場合に引き受けるかどうか,という議論がなされていました。

私はもう被疑者国選弁護人は受けていませんので,この議論についての私の考えを述べることは差し控えますが,被疑者国選弁護人を担当していたときに,次のような出来事がありました。

被疑者は窃盗未遂で逮捕・勾留され,同種前科での実刑(刑務所に入ることです)が数回あり,今回も確実に実刑で刑務所に入る見込みの方でした。

被疑者国選弁護人に選任された日に勾留されている警察署に行って接見すると,反省の弁などは一切述べず,ただ,とある都内のドヤ街の宿泊所に仕事道具などを置いてきたので警察署まで送ってほしい,と何度も丁寧に頼まれました。

当時の私は,これは国選弁護人の職務だろうか,と深く悩むことはなく,仕事道具がないと,被疑者が刑務所から出所したときに困るだろうな,と思い,どのような方法で持っていこうかと考えてウェブで地図を見たところ,宿泊所から徒歩圏内にクロネコヤマトの営業所があることが判明したため,宿泊所からクロネコヤマトの営業所に荷物を持ち込み,そこで荷造りをして警察署まで送る,という計画を立てました。

ちょうどその頃,私の知り合いで,独立を計画していた弁護士が私の事務所の見学に来る予定でしたので,ヘルプで一緒に宿泊所まで行ってくれることになりました。

ヘルプと言っても,被疑者からは仕事道具(ヘルメットや作業着)があるだけだと聞いており,窃盗で何度も刑務所に入っている人なので持ち物もほとんどないだろうと想定していましたので,念のため一緒に来てもらう,という感じでした。

(つづく)