私は千葉地方裁判所松戸支部から依頼を受けて破産管財人の業務を行っていますが,その際,破産者の方が所有する不動産を売却することがあります。
今回は,自己破産をする方が不動産を所有している場合について,その処理の仕方についてお話ししたいと思います。なお,以下の記述は,私が主に申立てを行っている千葉地方裁判所松戸支部の取り扱いを前提にしています。
まず,自己破産をする方が不動産を所有しているケースで最も多いのは,住宅ローンがあり,その住宅ローン債権者の抵当権が当該不動産に設定されているケースです。
この場合,住宅ローンの残額が不動産の査定額を一定程度以上上回っており,かつ自己破産をする方に少額管財となるための基準をみたす財産(20万円を超える預貯金等)がなければ,同時廃止で進めることが可能です。
他方,住宅ローンの残額が不動産の査定額を上回っているものの(これをオーバーローンといいます),その差が一定程度以下の場合は,他に20万円を超える預貯金等の財産がない場合でも,少額管財手続となり(破産管財人に引き継ぐ予納金として20万円が必要になります),破産管財人が任意売却を試みることになります。
ただし,自己破産の申立前に任意売却手続を行って売却を完了し,破産申立時には何らの財産もないという場合は,同時廃止で進めることが可能です。この場合は,売却手続きについて事前の裁判所のチェックがなされていないことになりますので(破産管財人が売却する場合は,裁判所の許可が必要です),適正な売却価格になるよう,慎重に進める必要があります。適正な売却価格でなく,住宅ローン残高よりも高い金額で売れる可能性があったと裁判所が判断した場合は,破産管財人による調査が必要であるとして少額管財になる可能性があります。
自己破産手続を検討している方で,任意売却も視野に入れている方は,必ず弁護士に相談してから不動産業者に依頼するようにしてください。