今回は任意整理の相談について,注意していただきたい点を述べたいと思います。
任意整理は個人の方が行う債務整理の手段の一つで,貸金業者やクレジットカード会社と個別に交渉して返済方法を取り決めるという手続きです。事件類型としては,交渉事件に該当します。自己破産や個人再生とは異なり,裁判所で行われる手続ではないですので,定期的に柏市に出張に来られる方が柏駅法律事務所で相談してそのまま任意整理を依頼することもできます(自己破産等はお住まいの住所地を管轄する地方裁判所に申し立てる必要がありますので,九州にお住まいの方の自己破産や個人再生を柏駅法律事務所で受任することは基本的にできません)。
交渉事件を弁護士に依頼する場合,着手金として最低10万円(プラス消費税)はかかるのが通常ですが,任意整理の場合,交渉の相手方は貸金業者かクレジットカード会社(信販会社)であり,交渉内容もある程度定型化されていますので,1社につき数万円程度で受任している弁護士が多数だと思います(なお,利息制限法の定める制限利率で引き直し計算を行った結果,過払いになっていて,その金額を回収した場合は,別途弁護士報酬の支払が必要になります)。弁護士法人心でも,任意整理は1社あたり3万9800円(税別)で受任しており,現在は減額報酬はいただいておりません。
この任意整理は,返済のための借り入れを繰り返して負債が増大したり,クレジットカードを使いすぎてしまったりしたために,月々の返済金額が返済可能額(毎月の収入から家賃や食費などの生活費を差し引いた金額です)を上回るようになってしまった場合に,月々の返済金額を減らすために行うものです。
(なお,月々の返済金額が返済可能額を超えていない場合,つまり返済には問題がない場合でも,借り入れ当初の利率が利息制限法の制限利率を超えており,制限利率で再計算すれば債務総額が減る場合に,債務総額を減らしたうえで返済方法を取り決める手続きも任意整理となります。)
そのため,月々の返済には問題がないにもかかわらず,例えば将来発生する利息をカットしたいから任意整理をしたい,という依頼については,受任することはできません。
利息の支払は,金融業者と合意したことにより発生する契約上の義務であり,月々の負担を減らす等,合理的な理由がないにもかかわらず,その契約上の義務を免れることを目的とした交渉を法律のプロフェッショナルである弁護士が引き受けるわけにはいかないからです。
ただし,現時点では返済に問題はないものの,例えば転職により3か月後以降から収入が減るとか,または子どもの学費等避けられない継続的な出費が3か月後から生じるなどの事情により,近い将来に返済が困難になることが明らかな場合に,前もって任意整理を行うことは可能です。