弁護士として破産管財人や相続財産管理人の業務を行う際、不動産を売却しなければならないことがよくあります。
相続財産管理人の場合、被相続人が身寄りのない(相続人のいない)成年被後見人であることもあり、その被相続人が戸建てを所有している場合は、家も古く中はかなり汚れていることもあります(身寄りがいないと成年後見人は弁護士や司法書士等になりますが、掃除をすることはあまりありません)。
その場合、不動産の買主は建物を解体して土地を利用する(新たに建物を建てて売却するなど)ことを想定して購入しますので、その解体費を考慮して購入価格を提示することになります。
この戸建ての解体費用ですが、私が関わった案件では、高くても数百万円程度が想定されていました。
2020年1月、滋賀県野洲市が市内の築48年の分譲マンションについて、空家対策特別措置法に基づき行政代執行で解体工事を始めたとのニュースが出ていました。このマンションは1972年建築の3階建てで、9部屋あるが、住人は十数年前にいなくなっており、管理組合がなく修繕費用も積み立てられていないため、壁や階段が崩れるなど老朽化が進んでいたとのことでした。
その後の報道によると、この解体工事には1億1800万かかり、その費用について市は所有者9人(9部屋あるマンションなので9人です)に各1300万円を請求し、一部の所有者は支払ったそうです。
3階建て(9部屋)のマンションでこの金額ですので、タワーマンションを解体する場合はどれほどの費用がかかるのでしょうか。日本の人口は今後も減り続け、それにともない住居の需要も少なくなりますので、マンションについても空き部屋が増えることになります。そうなると管理費や修繕積立金の滞納も増え、十分な修繕もなされないまま廃墟マンションになってしまいます。
現在の法制度では不動産を放棄することはできないため、そのようなマンションの所有者がそれを手放すためには、新たな買主を見つけなければなりません。しかし、住居の需要は減る一方です。
主要な駅の前に建っているマンションであれば需要が減ることもないと思いますが、そうではないマンションの購入を検討している場合は、将来のことを十分考えてから決めたほうがよさそうです。