相続財産管理人の仕事(第2回)

弁護士法人心 柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

今回は,相続財産管理人の業務と関連して特別縁故者に対する相続財産の分与について述べたいと思います。

1.民法958条の3は,「前条の場合において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって,これらの者に,清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」と規定しています。

本条は特別縁故者に対する相続財産の分与を定めた規定ですが,相続人が存在していないことを前提としていますので,相続人が存在している場合には,たとえ被相続人の療養看護に努めた者であったも,相続財産の分与を請求することはできません(被相続人は,相続人でない者に対する相続財産の分与を希望する場合は,生前に遺言を作成しておく必要があります)。

2.相続人がいないケースで,被相続人と生前の交流はほとんどなかった親戚が,被相続人の死亡後に葬儀などに尽力して多額の出費をし,相続財産を管理して相続財産管理人選任の申立てを行ったという場合(これを「死後の縁故」といいます。),現在の実務では,相続財産の分与は通常認められません。
また,葬儀費用は喪主の債務となりますので,相続財産からの支払を受けることはできません。葬儀費用は被相続人の債務であると誤解している方もいらっしゃいますので,十分注意が必要です。

3.被相続人の療養看護などを行い,特別縁故者と認められるような関係があったとしても,相続財産の分与を求める際には,特別縁故者であったことを証明する資料が必要です。
被相続人と同居し生計を同じくしていたという場合であれば立証も容易な場合が多いと思いますが,同居せずに療養看護に努めていたというようなケースでは,被相続人と一緒に撮った写真や被相続人からの手紙のような客観的証拠がなければ,特別縁故者として認められない場合もあります。

4.特別縁故者への財産分与を請求する申立てがあった場合,相続財産管理人は,その申立てについて,裁判所に対し意見を述べることとなります。また,特別の縁故の有無について,家庭裁判所調査官による調査が行われることもあります。

私が相続財産管理人を担当した案件で,複数人から特別縁故者に対する財産分与の申立てがなされましたが,資料を精査し一部の申立人について特別の縁故を否定する意見書を提出したところ,家庭裁判所調査官による調査が行われました。なお裁判所の結論は私の意見書のとおりとなりました。

相続財産管理人選任の申立てや特別縁故者としての相続財産分与の請求をお考えの方は,当法人までお気軽にご相談ください。

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