過払金返還請求訴訟における争点

弁護士法人心 柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

今回は,過払金返還請求訴訟で,貸金業者側と争いになる点の一つである取引の一連・分断についてご説明いたします。

なお,従前は,とくに消費者金融業者は,悪意の受益者について大量の証拠を提出し熱心に争ってきていましたが,現在では,書面上では争ってくるものの,大量の証拠を提出することはほとんどなく,特段の事情が認められることはほぼありません。

⑴ 取引の一連・分断とは,一度完済し,その後再度借り入れを開始しているケースにおいて,いったん完済するまでの取引(「取引1」とします。)と,再度の借り入れ以降の取引(「取引2」とします。)を一連のものとして計算できるかどうかという争点です。

一連で計算できる場合,取引1の完済時に発生している過払金を,取引2における借り入れに充当することができ,通常は,過払金の金額が大きくなります。

逆に,一連計算できない場合,取引1で生じている過払金と,取引2で生じている過払金を別々のものとして請求することになり,通常は,一連で計算するよりも過払金は少額になります。また,取引1の完済時から既に10年が経過していれば,取引1の過払金は時効消滅していることになります。

さらに,一連計算すれば過払になっているが,分断での計算だと債務が残る場合もあります。例えば,分断での引き直し計算(利息制限法所定の制限利率で計算することをいいます。)で,取引1は10万円の過払いになるが,取引2は30万円の債務が残る場合,相殺しても債務が残ります。

⑵ 取引の一連・分断の争点では,まず,取引1と取引2の基本契約が同じかどうかという点がポイントになります。なお,一連,分断の争点は,裁判官によっても判断の仕方が異なりますので,以下の説明は,私の理解を前提とするものであることをご了承ください。

例えば,取引1の完済時に基本契約を解約し,契約書の返還を受けている場合は,取引1と取引2の基本契約が異なりますので,分断での計算が原則となり,例外的に一連計算できる事情があるかどうかを検討することとなります。

取引1の完済時に基本契約を解約しておらず,取引2の開始時も,所持していたカードを使いATMで借り入れたというだけの場合は,原則として一連計算することとなります。

取引1の完済時に基本契約は解約していないが,取引2の開始時に基本契約の内容を変更する契約を締結している場合は,取引1と取引2の基本契約が実質的にも同じかどうか(取引2の変更契約により基本契約が実質的に変わったかどうか)を,諸事情を基に判断し,変わっていないという認定であれば原則として一連で計算し,変わっているという認定であれば例外的に一連計算できる事情があるかどうか(ただしこの事情は基本契約の同一性の認定で考慮した事情と重なる部分があります。)を検討することとなります。

次回以降に続きます。

弁護士法人心柏駅法律事務所では,過払い金返還請求を取り扱っております。