AI

1 この記事を執筆しているのは2023年4月28日ですが、今日は第81期名人戦第二局2日目の対局が行われており、渡辺明名人に藤井聡太竜王が挑戦しています。この記事を執筆している時点では渡辺明名人がやや優勢になっているようです。

第一局は挑戦者藤井聡太竜王が勝利していますが、5日前の4月23日に行われた叡王戦第二局では藤井聡太叡王は菅井竜也8段に敗れています。ややスランプに陥っているのでしょうか。

さて、将棋界はAIの登場によって様相がガラリと変わり、藤井聡太竜王もAMD製の高性能CPUを搭載したパソコンを使用して研究を重ねています。AMDから高性能CPUが搭載されたパソコンの提供を受けたので、古いパソコンは師匠の杉本昌隆八段に譲ったそうです。

先日テレビ番組を見ていたら、かつては隆盛だった戦法も、AIにより勝率が低いことが判明すると、廃れていったという話が出ていました。

このAIは、これまでに行われた対決の棋譜をパソコンに入力し、それをAIが解析することで、現在行われている対局の次の最善手を示してくれます。日曜日に放送されている将棋のNHK杯でも、対局の途中からAIによる最善手が表示されています。

となると、結局のところ人間はAIに将棋で勝つことはできず、今後の将棋は、人間同士が対決することによるドラマを楽しむということになるのでしょうか。

2 法律相談においても、ある法律相談サイトにおいて、投稿された相談内容とそれに対する弁護士の回答をAIが分析し、AIが法律相談を行うような方向で開発が進められているようです。

ネットの発達により、法律問題についての解決法もネット上で容易に探せるようになり、それに伴い弁護士が行う法律相談の価値は相対的に下がってきましたが、AIが法律相談を行えるようになると、その価値はさらに下がってしまうことになります。 私は、民間会社では管理職になっているような年齢ですのであとは枯れていくだけですが、これから弁護士として活躍する若い方は、より高度な知識と技術を要求されることになるのではないかと思います。

雑感

弁護士の業務は、現在はその対象も広がってはいますが、典型的には、紛争事案について法律を適用し、解決に導くというものです。その解決の方法として、紛争の相手方との交渉や、裁判所での調停、裁判があります。

この法律ですが、その条文は抽象的なことも多いですので、実際の紛争に適用するにあたっては、最高裁判所の判例や高等裁判所等下級審の裁判例を参考にしなければならないことも多くあります。

また、法律そのものについて大きな改正がなされた場合は、改正法についての知識をしっかり身に付ける必要があります。

さらに、司法試験合格者数の増加により弁護士数もかなり増えましたが、それにより生じたのは、弁護士が扱う各分野についての専門分化です。現在では、刑事事件専門事務所、離婚事件専門事務所、相続事件専門事務所、交通事故専門事務所など、専門事務所は珍しくなくなりました。

専門分化により、各分野についての知識、処理方法などが深化し、複数の分野を広く浅く扱うということが難しくなってきました。

もちろん、弁護士としての一般的な能力を身に付け、底力を養うためには、多種多様な案件を扱うことで様々な知見を習得する必要がありますが、そうなると、各分野の深化に追いつけないということにもなりかねません。

このように、弁護士は常に知識や情報をアップデートし、取り扱っている分野の深化に追いついていかなければなりませんが、年齢を重ねると物忘れも激しくなり、勉強を継続するための体力も衰えますので、知識のブラッシュアップがなかなか困難になります。

私も既にアラフィフで体力も衰えてきていますが、私は視力がかなり悪く、かつ左右の目の視力が異なるため、慢性的な眼精疲労で、書籍や雑誌に目を通すことができる時間も限られています。

最近、講談社現代新書で河村小百合さんの「日本銀行 我が国に迫る危機」が出版されましたので、購入し読んでいますが、他にも読みたい本は多く、読みたい本ばかり読んでいると、法律関係の本に目を通す時間が減ってしまうので悩ましいところです。

預り金について

最近、鹿児島県弁護士会に所属する弁護士が、顧客の預り金を流用していたため業務停止1年の懲戒処分を受けたとの報道がありました。預り金の流用は同弁護士が千葉県弁護士会に所属している間に行われたということです。また、報道によると、流用された預り金は全額返還されたとのことです。

弁護士は、多額の金額を一時預かることがよくあります。例えば交通事故の損害賠償請求を弁護士が代理人として行う場合、和解金の振込先口座として弁護士の預り金口座を指定することが多いですので、例えば和解金額が1億円の場合、その金額を一時預かることになります。そして、弁護士の預り金口座に振り込まれた和解金から成功報酬や実費を差し引いて依頼者の方に返金することになります。

弁護士の預り金口座に和解金等を入金してもらうのは、成功報酬の確保が第一の目的です。そのため、事件の相手方からの金銭の支払いが予定されていない案件の場合、成功報酬見込額に相当する金額を事件受任時にお預かりすることがあります。例えば、相手方からの金銭の支払いが予定されていない(財産分与や慰謝料の請求がない)離婚事件などです。

私は主に個人の方の破産再生関係を扱っていますので、預かるとしても実費見込額程度ですが、過払金返還請求の場合は、和解金の振込先として所属法人の預り金口座を指定しています。そして、この和解金を破産の費用等に充てる必要がある場合等を除き(例えば負債が700万円で破産は必要であるが、50万円の過払金もある場合、原則としてまず過払金を回収し、回収した過払金を破産の費用に充てています)、原則として和解金が入金された当日に依頼者の皆さまに返金するよう心掛けています。

また、遺産分割の関係で私が預貯金等の相続手続きを行う場合、ある程度の期間、解約した多額の預金を預り金口座で預かることがありますが、このようなケースでは、依頼者の方が不安にならないよう、定期的に進捗状況を連絡しています。

多額の金銭を依頼している弁護士が預かっているケースで、比較的長期間何の連絡もない場合は、遠慮は全く不要ですので、依頼している弁護士に詳細を問い合わせてください(問い合わせに対する弁護士の回答があいまいでわからない場合は、必ず詳しい説明を求め、それでもあいまいな場合は、他の弁護士や弁護士会に相談してください)。