消費税の増税にともなう予納金の増額について

令和元年(2019年)10月1日から,消費税の利率が10%になります。

消費税の増税にともない,官報広告に必要となる手数料も増額となりますので,破産手続や個人再生手続において,官報広告費として納付する予納金も増額になります。

例えば,千葉地方裁判所(支部も含みます)の破産同時廃止手続では,予納金は1万1644円から1万1859円へ値上げになります。個人の方の管財手続では,1万8205円から1万8543円に値上げとなります。

なお,官報公告の手数料は本年4月にも値上げしており,それにともない予納金も値上げされていました。上記の1万1644円(同時廃止手続)および1万8205円(個人の管財手続)は,4月の値上げ後の金額です。

ところで,破産手続では,同時廃止の場合を除き,上記の官報広告費としての予納金のほかに,破産管財人に引き継ぐ予納金を準備する必要があります。千葉地方裁判所(支部も含みます)では,個人または法人の少額管財手続では,この予納金として20万円を準備する必要があります。

少額管財手続では,破産管財人の業務として相当額の出費が必要となるものは想定されておらず,この20万円の予納金は,破産管財人の報酬に充てることが予定されています。

なお,千葉地方裁判所(支部を含みます)では,個人再生手続で個人再生委員が選任される場合,住宅資金特別条項を定める手続きの場合は20万円,定めない手続の場合は15万円必要となりますが,この金額も再生委員の報酬に充てられるものです。

ところで,私は消費税が5%のときから弁護士をしており,千葉地方裁判所松戸支部で破産管財人や個人再生委員を担当していますが,官報広告費としての予納金は消費税の増税にともない値上げされているものの,少額管財手続の引き継ぎ予納金や個人再生手続での個人再生委員の費用は20万円ないし15万円に据え置かれたままです。10%への増税後も,金額は同じです。

20万円が破産管財人ないし個人再生委員の報酬として支給される場合,これは消費税込みの金額となりますので,消費税が5%の場合の税抜きの金額は19万477円,8%の場合は18万5184円,10%の場合は18万1819円になります。

 

法律相談について

1 弁護士が行っている法律相談は,法律に関係するトラブルに巻き込まれた方など,法律による対応が必要な方を対象として行っているものです。

例えば,離婚の場合,親権,養育費,慰謝料,財産分与などの離婚条件を決める必要があります。これらの条件は,まずは法律に則って検討しなければなりませんので,弁護士が行っている離婚相談の対象になります。

他方,配偶者から離婚を求められた方が,離婚を回避したい,という趣旨で法律相談を希望する場合,現時点で配偶者が離婚訴訟を提起した場合に判決で認められるかどうかを検討する,という点では法律の問題になりますが,離婚を回避したいという方のほとんどは,離婚訴訟を起こされた場合のことではなく,配偶者と仲良くする方法を知りたい,という趣旨で弁護士に法律相談を申し込んでいるのではないかと思います。

このような場合,仲良くする方法というのは事実上の問題で,法律で解決できる内容ではありません。このような内容の相談では,私は個人的な意見・感想を話したり,家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満調停)を説明するくらいのことしかできません。

2 法律相談は,法律に関係するトラブルに巻き込まれた方ご本人(当事者)を対象として行うものです。もちろん,刑事事件の法律相談で,ご本人が逮捕・勾留されている場合はご本人が弁護士事務所に来ることはできませんので,ご家族を対象として相談を行うことになります(その後,弁護士が警察署等でご本人と接見して事情を聴くことになります)。

しかし,離婚相談の場合,離婚の当事者ではなく,当事者のご両親(またはその一方)から相談の申し込みがあり,当事者は相談に来る予定(意思)はない,ということがあります。

当事者のご両親は,弁護士から説明を受けてそれを当事者に伝える,という趣旨で法律相談を申し込んでいることが多いですが,この場合,伝言ゲームの危険性があります。つまり,弁護士の説明をご両親が誤解して,または歪めて当事者に説明する危険があるということです。ご両親のみが相談を希望している場合,離婚について当事者である息子または娘と意見が対立していることがあり,そのようなケースでは,弁護士の説明が歪められて当事者に伝えられる危険が生じやすくなります。

また,離婚の条件等を検討するためには,当然ですが,当事者から具体的な事情を聴かなければなりません。

そのため,私が担当している離婚相談では,当事者が来所しないご相談は原則としてお断りしています。

裁判傍聴と記録の閲覧

民事訴訟や刑事訴訟の審理は,原則として公開の法廷で行われます。日本国憲法82条1項は,「裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。」と規定しています。公開されている審理は,どなたでも裁判所で膨張することが可能ですが,傍聴席には限りがありますので,傍聴人が多数見込まれる事件では,抽選が行われることがあります。東京地方裁判所では,ウェブサイトで傍聴券交付情報を公開しています。

私が過去に担当した訴訟事件では,傍聴席が満席になったことはありませんが,裁判員裁判ではほぼ満席になった事件もありました。また,私が担当した松戸の裁判所の刑事裁判では,傍聴席が混雑することはほとんどなく閑散としていましたが,学生さんが社会科見学で傍聴に来ていたときは,傍聴席の半分程度が埋まっていました。自白事件でしたのであまり勉強にはならなかったと思いますが。

審理,判決が公開の法廷で行われるということは,提出された書面や証拠も公開されるということを意味します。民事訴訟法91条1項は,「何人も、裁判所書記官に対し、訴訟記録の閲覧を請求することができる。」と定めています。当事者やその代理人弁護士だけが閲覧できる,というわけではありません。ただし,訴訟記録の謄写は,訴訟の当事者または当該訴訟について利害関係のある第三者のみ行うことができます(民事訴訟法91条3項)。

私が担当している離婚訴訟や慰謝料関係の訴訟では,当事者のプライバシーに関わる書面や証拠が提出されることがあります。このような場合は,プライバシーに関わる書面や証拠の閲覧制限を裁判所に申し立てることなります。民事訴訟法92条1項は,「次に掲げる事由につき疎明があった場合には、裁判所は、当該当事者の申立てにより、決定で、当該訴訟記録中当該秘密が記載され、又は記録された部分の閲覧若しくは謄写することができる者を当事者に限ることができる。」と規定し,その1号で「訴訟記録中に当事者の私生活についての重大な秘密が記載され、又は記録されており、かつ、第三者が秘密記載部分の閲覧等を行うことにより、その当事者が社会生活を営むのに著しい支障を生ずるおそれがあること。」と定めています。

私が過去に被告側の代理人として担当した慰謝料請求訴訟では,プライバシーに関わる写真やメール等が原告側から証拠として提出されたこともありましたので,閲覧制限を申し立てたことが2回ほどあります(いずれも認められました)。

個人再生のご相談について

今回は,弁護士に個人再生を相談いただく際に,確認,準備いただきたい点についてご説明します。

① 個人再生は,法律のルールにしたがい圧縮された債務を,再生計画で定められた期間で返済する手続きです。返済期間は原則3年で,特別の事情があれば5年まで延長可能です。

つまり,個人再生手続きは,破産手続と異なり返済をすることを前提としますので,毎月どの程度の金額を返済に充てることができるか,弁護士へのご相談の前にチェックしていただく必要があります。

とくに,住宅ローンがあり,自宅を残すために住宅資金特別条項の利用を希望されている方の場合,配偶者や子ども等の家族がいる場合がほとんどですので,子どもの成長,進学等で増えることが想定される支出も考慮して返済に充てることができる金額を計算していただく必要があります。

② 個人再生手続きでは,住宅資金特別条項を利用することにより,住宅ローンの支払いは継続しながら,その他の負債(カードローン,カードショッピング等)を整理することが可能です。これにより,居住する自宅を残すことが可能になります。

この住宅資金特別条項を利用するためには,一定の要件が必要となりますので,その確認のため,ご相談の際に住宅ローンの契約関係書類,登記事項証明書(不動産登記)をご準備いただくとスムーズにご相談が進みます。例えば,住宅に住宅ローン以外の債務の抵当権(例えば,消費者金融会社が提供している不動産担保ローンなど)が設定されている場合は,住宅資金特別条項を利用することはできませんが,これは登記事項証明書により確認でいます。

また,住宅ローンとしての借り入れであっても,例えば借入金額3500万円のうち500万円が住宅購入の際の諸費用(仲介手数料,登記費用等)の支払いや家財道具(電器,カーテン等)の購入費用に充てられている場合,この500万円の部分は住宅資金にはあたらないため,住宅資金特別条項を利用できるかどうか,慎重に検討する必要があります。

住宅ローン契約関係の書類には,住宅ローンとして借り入れた金銭の使途が記載されていますので,その書類をご用意いただければ,初回のご相談の際に確認が可能になります。

個人再生委員について

1 個人再生について,千葉地方裁判所(本庁,支部)では,弁護士が代理人として申立てを行う場合は,原則として再生委員は選任しないという扱いになっています。弁護士が代理人になっていない場合(司法書士が書類を作成して申立てを行う場合など)は,個人再生委員(弁護士)が選任され,住宅資金特別条項を利用する場合は20万円,利用しない場合は15万円の再生委員費用が必要となります。なお,この費用の支払いについては分割での支払いが認められています。

2 弁護士が代理人として申し立てた場合でも,例外的に個人再生委員が選任されることがあります。選任される基準については,千葉地方裁判所が公表しているわけではありませんので推測になりますが,当該事案に何らかの法律上の問題があり,手続を進めるにあたって個人再生委員の意見も必要な場合に選任が行われているように見受けられます。

なお,個人再生委員の主な業務は,再生債務者の財産状況等をチェックし,手続について裁判所に意見書を提出する(例えば,「再生計画案の認可が相当である」など)ことです。

3 個人再生手続きでは,再生債権を確定し,それに基づいて再生計画案を作成することがメインになります。再生債務者は,その再生計画案に従って返済をすることになりますが,再生債務者の収入状況等にかんがみその返済が厳しいということであれば(これを「履行可能性がない」といいます),再生計画は認可されません。

特に,住宅資金特別条項を利用する個人再生を行う場合,自宅を残すためにある程度無理をして個人再生を申し立てているケースもありますので,そのような場合は,弁護士が代理人に就いていても,履行可能性を厳しくチェックするために個人再生委員が選任される可能性が高くなります。

4 個人再生委員は,再生手続の開始決定がなされる前に選任されます。個人再生委員が選任されると,個人再生委員の事務所で再生委員面接が行われます。面接では,申立書や添付資料(銀行口座の通帳など)の内容や,当該事案で法律上問題となっている点について再生委員から質問等が行われることになります。

再生委員面接を経て,再生手続を開始することについて問題ないと判断した場合は,個人再生委員は,裁判所に対し再生手続開始を相当と考える旨の意見書を提出し,それに基づいて裁判所は再生手続の開始決定を出すことになります。

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破産事件における任意売却

私は千葉地方裁判所松戸支部から依頼を受けて破産管財人の業務を行っていますが,その際,破産者の方が所有する不動産を売却することがあります。
今回は,自己破産をする方が不動産を所有している場合について,その処理の仕方についてお話ししたいと思います。なお,以下の記述は,私が主に申立てを行っている千葉地方裁判所松戸支部の取り扱いを前提にしています。

まず,自己破産をする方が不動産を所有しているケースで最も多いのは,住宅ローンがあり,その住宅ローン債権者の抵当権が当該不動産に設定されているケースです。
この場合,住宅ローンの残額が不動産の査定額を一定程度以上上回っており,かつ自己破産をする方に少額管財となるための基準をみたす財産(20万円を超える預貯金等)がなければ,同時廃止で進めることが可能です。

他方,住宅ローンの残額が不動産の査定額を上回っているものの(これをオーバーローンといいます),その差が一定程度以下の場合は,他に20万円を超える預貯金等の財産がない場合でも,少額管財手続となり(破産管財人に引き継ぐ予納金として20万円が必要になります),破産管財人が任意売却を試みることになります。

ただし,自己破産の申立前に任意売却手続を行って売却を完了し,破産申立時には何らの財産もないという場合は,同時廃止で進めることが可能です。この場合は,売却手続きについて事前の裁判所のチェックがなされていないことになりますので(破産管財人が売却する場合は,裁判所の許可が必要です),適正な売却価格になるよう,慎重に進める必要があります。適正な売却価格でなく,住宅ローン残高よりも高い金額で売れる可能性があったと裁判所が判断した場合は,破産管財人による調査が必要であるとして少額管財になる可能性があります。

自己破産手続を検討している方で,任意売却も視野に入れている方は,必ず弁護士に相談してから不動産業者に依頼するようにしてください。

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破産管財手続における郵便物の転送

破産管財手続では,破産手続開始から原則として手続終了までの間(原則と記載したのは,例えば債権者集会が複数回行われるケースでは,不要であれば第1回の債権者集会の終了をもって転送をストップすることもあるためです),破産者宛の郵便は破産管財人に転送されます。通常の郵便のほか,レターパックも転送されます。そのため,通信販売でCDや本を購入する際,配送方法がレターパックだと破産管財人に転送されてしまいます。また,ゆうメールは転送の対象外ですが,誤って転送されることもありますので注意が必要です。

転送されるのはあくまで破産者宛の郵便ですので,破産者の同居の家族宛の郵便は転送されません。同居の家族宛の郵便が間違って破産管財人に転送されても,破産管財人は封を開けてその内容物を確認することはできません。

破産者の郵便が破産管財人に転送されるのは,まず第一に,破産管財人が破産者の財産を調査できるようにするためです。破産管財人には弁護士が選任され,私も何件か担当したことがありますが,破産者の郵便の調査により,破産者が忘れて放置していた証券口座が見つかったことが何回かあります。そのため,弁護士に自己破産を依頼する際は,必ずすべての銀行口座,証券口座等を洗い出し,弁護士に申告してください。

ただ,今のようなネット社会では,金融機関等からの連絡はメールやウェブサイトのマイページで完結することも多くなっていますので,郵便物の調査のみでは不十分になってきているというのが実情です。私も,疑わしい事案では金融機関等に直接問い合わせて口座の有無を確認しています。

このように,郵便の転送の第一の目的は破産管財人による破産者の財産調査になりますが,免責不許可事由の調査でも役に立つことがあります。例えば,転送郵便でパチンコ店からのダイレクトメールが定期的に届くことがありますが,このようなダイレクトメールはパチンコ店で何らかの手続きをしないと届きませんので,破産者がパチンコをしていたという推測が働きます。パチンコや競馬などをした経験がある場合は,仮に借金とは関係ないとしても,自己破産を依頼する際に弁護士に申告するようにしてください。

 

 

相続放棄について2

今回も,相続放棄の手続について弁護士にご相談,ご依頼をいただく場合の注意点などについてご説明します。

前回は相続人についてご説明しましたので,今回は相続財産についてご説明します。

(1)相続財産とは,相続によって相続人に引き継がれることになる権利義務関係です。「義務」とあるように,借金(借りたお金の返済義務)も相続財産になります(いわゆるマイナスの財産です)。

被相続人が受取人になっている死亡保険金も,被相続人の死亡と同時に被相続人が保険金請求権を取得し,それを相続人が相続することになりますので,相続人が手続きをして保険金を受領してしまうと,法定単純承認となり相続の放棄はできなくなります(民法921条1号)。

他方,例えば被相続人の妻が受取人になっている死亡保険金の場合,被相続人の死亡により被相続人の妻が直接保険金請求権を取得することになりますので,これは相続財産にはあたりません。

例えば,被相続人の借金が500万円あり,他方で被相続人が受取人を被相続人の妻とする生命保険(死亡保険金額1000万円)に加入していた場合,妻は,相続放棄をしても,1000万円の保険を受け取ることができます(相続放棄をしているので500万円の借金は相続しません)。

(2)上述のとおり,相続財産にはマイナスの財産も含まれますが,被相続人にマイナスの財産があるかどうか不明な場合もあります。この場合は下記のように対処してください。

まず,被相続人がある特定の貸金業者から借り入れていることは間違いないが(例えば財布にクレジットカードやローンカードが入っていた場合),その金額が不明の場合,法定相続人であれば,その業者に借入金残額の照会をすることが可能です。

また,業者名が分からない場合でも,銀行や消費者金融,信販会社(クレジットカード会社)からの借入等であれば,信用情報を調べることで業者が判明します。著名な信用情報機関にはJICC,CICおよびKSCがありますが,この3つの信用情報に業者が記載されていれば,その業者に照会することで借り入れ等の有無,金額が判明します。

他方,個人からの借り入れや,借入等以外の債務(例えば損害賠償債務)は信用情報を調べてもわかりませんので,被相続人が遺した通帳や書類等を丹念に調べる必要があります。例えば,特定の個人に対する振り込みが定期的に通帳に記録されている場合,当該個人からの借入金の返済である可能性があります。

 

相続放棄について

私は昨年後半から柏駅法律事務所で相続の相談を担当していますが,数多くご依頼をいただいている案件は,相続放棄の申述についての手続代理です。
そこで,今回から次回にかけて,相続放棄について弁護士にご相談,ご依頼をいただく場合の注意点などをいくつかご説明したいと思います。

1 相続人について
相続人には二つの系統があり,一つが配偶者相続人で,もう一つが血族相続人です。
配偶者相続人とは,文字通り死亡した被相続人の配偶者です。被相続人が死亡した時点で「配偶者」でなければなりませんので,死亡前に離婚していた場合は,「元妻」または「元夫」は相続人にはなりません。
日本では一夫一婦制が採用されていますので,配偶者相続人は一人となり,被相続人の配偶者は必ず相続人になります(もちろん相続欠格等により相続権を失うことはあり得ます)。
もう一方の血族相続人は,第1順位が被相続人の子(死亡している場合は代襲相続人である被相続人の子の子。被相続人の子の子も死亡している場合は被相続人の子の子の子,つまり被相続人のひ孫が相続人になります),第2順位が被相続人の直系尊属,第3順位が被相続人の兄弟姉妹(死亡している場合はその兄弟姉妹の子)で,被相続人と血のつながりのある自然血族のみならず,養子縁組により養親・養子の関係となった法定血族も含まれます。
血族相続人については順位がありますので,第1順位の相続人が存在し,かつ相続放棄をしていない場合は,第2順位以下の血族は相続人になりません。例えば,第1順位の相続人が3人存在する場合,3人全員が相続放棄をしない限り,第2順位の血族は相続人になりません。
この場合,第1順位の相続人全員が相続放棄の申述を家庭裁判所に対して行い,全員の申述が受理された時点で第2順位の血族が相続人となりますので,第2順位の血族は,第1順位の相続人全員の相続放棄の申述が受理された後に相続放棄の申述を行うことになります。
なお,第2順位の相続人(直系尊属)は,親等の近い者から相続人になります。具体的には,被相続人に子がいない,または全員相続放棄をした場合,被相続人の両親(一親等)が相続人になり,両親が被相続人の死亡前に死亡していたり,相続放棄をした場合は,二親等の祖父母が相続人となります。第3順位の血族(被相続人の兄弟姉妹)が相続放棄を行うには,被相続人の直系尊属全員が死亡,または相続放棄をしていることが前提となります。

次回に続きます。

※なお,同時死亡の場合は相続関係は発生しません。例えば,父と子が飛行機事故で同時に死亡した場合,その子は父の相続人になりませんし,その子に第1順位の相続人が存在しない場合に父がその子の相続人になることもありません。

 

破産・再生についての最新情報

1 予納金の値上げについて

自己破産や個人再生を行う場合,所定の事項が官報で公告されます。官報で公告を行う場合,所定の手数料(官報公告掲載料金)が必要となりますが,自己破産または個人再生を申し立てた場合,その手数料を裁判所に予納する必要があります。

この官報公告掲載料金ですが,平成31年4月から値上げされますので,それにあわせて裁判所に納付する予納金も値上げされます。

千葉県の東葛6市(柏市,松戸市,鎌ヶ谷市,野田市,流山市,我孫子市)を管轄する千葉地方裁判所松戸支部では,自己破産(同時廃止)の場合の予納金は,従来は1万584円でしたが,値上げにより1万1644円になります。

ちなみに,千葉地方裁判所松戸支部では,少額管財の引継予納金(管財人に引渡す現金)は現在のところ20万円ですが,これは,消費税が5%の頃と変わりません。

少額管財の引継予納金は基本的に管財人の報酬に充てられるものですが,仮に実費等一切かからず20万円すべてが管財人報酬になった場合,その20万円には消費税も含まれますので,税率が5%だとすると20万円のうち9523円が消費税となりますが,税率が8%ですと1万4814円が消費税となります。今後税率が10%に引き上げられた場合,引継予納金が20万円のまま据え置かれると,20万円のうち1万8181円が消費税となり,8%のときと比べて管財人の報酬は目減りすることとなります。

私は千葉地方裁判所松戸支部の破産管財人を引き受けていますので,管財人の立場からすると,消費税率の引き上げに合わせて引継予納金も引き上げてほしいと思うこともありますが,破産を申し立てる方の代理人の立場からしますと,予納金の準備が大変な方もいらっしゃいますので,このまま20万円で据え置いてほしいという気持ちもあります。

2 運用の変化について(千葉地方裁判所松戸支部)

千葉地方裁判所松戸支部では,平成30年4月の裁判官の異動により,破産,個人再生を担当する裁判官が交代しました。

そのため,以下の点で運用に変化が生じています。

⑴ 破産の債権者集会の所要時間

平成30年3月までは,債権者集会は通常5分程度で終了していましたが,現在の担当裁判官は,債権者集会で管財人や破産者の方に対し質問等を行うことが多く,所定の10分を超えることもまれではなくなっています。

そのため,開始予定時刻が10分から20分程度遅れることもあります。

⑵ 個人再生委員の選任

千葉地方裁判所松戸支部では,弁護士が代理人として個人再生の申立てを行う場合は,原則として個人再生委員は選任されませんが,近時,例外的に選任されるケースが増えているとの話があります。

個人再生委員が選任されると,費用(個人再生委員の報酬に充てられます)として20万円(住宅資金特別条項を利用する場合。利用しない場合は15万円です。)必要となりますので,注意が必要です。

任意整理の相談について

今回は任意整理の相談について,注意していただきたい点を述べたいと思います。

任意整理は個人の方が行う債務整理の手段の一つで,貸金業者やクレジットカード会社と個別に交渉して返済方法を取り決めるという手続きです。事件類型としては,交渉事件に該当します。自己破産や個人再生とは異なり,裁判所で行われる手続ではないですので,定期的に柏市に出張に来られる方が柏駅法律事務所で相談してそのまま任意整理を依頼することもできます(自己破産等はお住まいの住所地を管轄する地方裁判所に申し立てる必要がありますので,九州にお住まいの方の自己破産や個人再生を柏駅法律事務所で受任することは基本的にできません)。

交渉事件を弁護士に依頼する場合,着手金として最低10万円(プラス消費税)はかかるのが通常ですが,任意整理の場合,交渉の相手方は貸金業者かクレジットカード会社(信販会社)であり,交渉内容もある程度定型化されていますので,1社につき数万円程度で受任している弁護士が多数だと思います(なお,利息制限法の定める制限利率で引き直し計算を行った結果,過払いになっていて,その金額を回収した場合は,別途弁護士報酬の支払が必要になります)。弁護士法人心でも,任意整理は1社あたり3万9800円(税別)で受任しており,現在は減額報酬はいただいておりません。

この任意整理は,返済のための借り入れを繰り返して負債が増大したり,クレジットカードを使いすぎてしまったりしたために,月々の返済金額が返済可能額(毎月の収入から家賃や食費などの生活費を差し引いた金額です)を上回るようになってしまった場合に,月々の返済金額を減らすために行うものです。
(なお,月々の返済金額が返済可能額を超えていない場合,つまり返済には問題がない場合でも,借り入れ当初の利率が利息制限法の制限利率を超えており,制限利率で再計算すれば債務総額が減る場合に,債務総額を減らしたうえで返済方法を取り決める手続きも任意整理となります。)

そのため,月々の返済には問題がないにもかかわらず,例えば将来発生する利息をカットしたいから任意整理をしたい,という依頼については,受任することはできません。
利息の支払は,金融業者と合意したことにより発生する契約上の義務であり,月々の負担を減らす等,合理的な理由がないにもかかわらず,その契約上の義務を免れることを目的とした交渉を法律のプロフェッショナルである弁護士が引き受けるわけにはいかないからです。

ただし,現時点では返済に問題はないものの,例えば転職により3か月後以降から収入が減るとか,または子どもの学費等避けられない継続的な出費が3か月後から生じるなどの事情により,近い将来に返済が困難になることが明らかな場合に,前もって任意整理を行うことは可能です。

任意整理等の債務整理の種類についてはこちらもご覧ください。

国選弁護人(つづき)

前回の続きです。

電車を降りて徒歩15分くらいでドヤ街の宿泊所に着きましたので,管理人に部屋まで案内してもらうと,被疑者の荷物はすでにビニール袋に無造作に詰められていました。
そのビニール袋は90リットルは優に超える大きさで,数は3つありました。とても一人で持てる量ではありません。
そこで,私が2袋,知人の弁護士が1袋を持ってクロネコヤマトの営業所に向かうことになりました。
私は国選弁護人で,管理人にもその旨事前に明確に伝えていましたが,管理人には,邪魔な荷物を早く持って行ってくれ,という感じで対応されました。

重いビニール袋を持ってどうにかクロネコヤマトの営業所にたどり着き,段ボールを購入して,被疑者が勾留されていた警察署宛に送りました。なお,宿泊所までの交通費も,段ボールの料金も配送の料金も国選報酬とは別に支給されることはありません。遠方に被疑者の荷物を取りに行ったからといって,報酬が増えるわけでもありません。
そもそも国選弁護人の報酬は低廉で,かつこのような実費も支給されませんので,国選弁護人をやらない弁護士が増えているのも当然だと思います。

被疑者は当然ですが起訴されましたので(起訴後は「被告人」になります),裁判の打ち合わせのために拘置所に行ったところ(起訴後,被告人は警察署から拘置所に移管されるのが通常です),特にお礼を言われることはありませんでした。周囲の迷惑など全く気にしないから,何度も窃盗をしていたのでしょう。
そこで,公判期日の被告人質問では,私が苦労して荷物を運んだことを話してどう思っているのかと質し,反省を促す質問を多く行いました。そのため,検察官による反対質問はわずか一つでした。

そして,被告人は懲役1年数か月程度の実刑になり,控訴することなく服役しました。

時は過ぎ,その裁判から2・3年経った頃だったと思いますが,松戸の裁判所でふと刑事の法廷の開廷表を見ると,その被告人の氏名が記載されていました。罪名は(もちろん)窃盗です。

なお,この被告人は経済的利益を得ることを目的として窃盗を繰り返していましたが,最近,理由もなく窃盗を繰り返すクレプトマニア(窃盗症)という精神疾患が広く認知されるようになっています。ウェブ上にも多数の情報が掲載されていますので,興味のある方は検索してみてください。
精神疾患や脳の異常が原因の犯罪については,今後さらに研究が深められると思いますが,脳科学の最前線について知りたい方には,「あなたの知らない脳―意識は傍観者である」(ハヤカワ・ノンフィクション文庫)がお勧めです。

国選弁護人

私は2010年5月から柏市で弁護士をしていますが,当時はまだ千葉地方裁判所松戸支部の管轄である東葛6市(柏市,松戸市,流山市,野田市,我孫子市,鎌ヶ谷市)に事務所を構える弁護士数は比較的少なく,結構な頻度で被疑者国選が配点されていました。なお現在は私は被疑者国選弁護人の担当をしていませんが,担当している弁護士に聞くと,1ヵ月に1回程度配点されているようです。

千葉県弁護士会松戸支部での被疑者国選の配点は,担当者が掲載されている名簿の順番で,配点される際に配点を受ける意思を確認されることはなく,いわば強制配点でした。もちろん,事前に配点そのものを停止することは可能ですが,弁護士会の事務局への連絡が必要で(もちろん事務局は平日しか業務を行っていません),そのため,日曜だったと思いますが,突然高熱が出たため病院の日曜診療を受けた日に配点されたことがあります。

最近,SNS上で,国選弁護の場合に,逮捕勾留された被疑者・被告人から自宅に残してきたペットの餌やりを頼まれた場合に引き受けるかどうか,という議論がなされていました。

私はもう被疑者国選弁護人は受けていませんので,この議論についての私の考えを述べることは差し控えますが,被疑者国選弁護人を担当していたときに,次のような出来事がありました。

被疑者は窃盗未遂で逮捕・勾留され,同種前科での実刑(刑務所に入ることです)が数回あり,今回も確実に実刑で刑務所に入る見込みの方でした。

被疑者国選弁護人に選任された日に勾留されている警察署に行って接見すると,反省の弁などは一切述べず,ただ,とある都内のドヤ街の宿泊所に仕事道具などを置いてきたので警察署まで送ってほしい,と何度も丁寧に頼まれました。

当時の私は,これは国選弁護人の職務だろうか,と深く悩むことはなく,仕事道具がないと,被疑者が刑務所から出所したときに困るだろうな,と思い,どのような方法で持っていこうかと考えてウェブで地図を見たところ,宿泊所から徒歩圏内にクロネコヤマトの営業所があることが判明したため,宿泊所からクロネコヤマトの営業所に荷物を持ち込み,そこで荷造りをして警察署まで送る,という計画を立てました。

ちょうどその頃,私の知り合いで,独立を計画していた弁護士が私の事務所の見学に来る予定でしたので,ヘルプで一緒に宿泊所まで行ってくれることになりました。

ヘルプと言っても,被疑者からは仕事道具(ヘルメットや作業着)があるだけだと聞いており,窃盗で何度も刑務所に入っている人なので持ち物もほとんどないだろうと想定していましたので,念のため一緒に来てもらう,という感じでした。

(つづく)

債務整理と節約

弁護士法人心 柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

債務整理のうち,地方裁判所の手続で行う自己破産や個人再生では過去2年分(千葉地方裁判所の場合。柏市在住の方の場合,自己破産および個人再生手続の管轄は千葉地方裁判所松戸支部になります。)の通帳の写しを提出する必要がありますので,依頼者の方の預金取引の内容を見る機会が多くあります。

その預金取引のうち,もったいないのではないかと私がいつも思うのは,預金を引き出す際のATM手数料です。

たしかに,平日の日中忙しい方であれば,平日の早朝や夜間,または土日に預金を引き出す必要がありますので,やむを得ないと言えるかもしれません。

しかし,ネット銀行を中心に,ATM(セブン銀行ATMなど)での預金引き出しを無料としている銀行もありますので,平日の日中に引き出せないのであれば,都市銀行ではなくネット銀行を使うべきです。

もちろん,給料の支払口座が特定の都市銀行または地方銀行に指定されている場合はやむを得ないですが,ネット銀行もあわせて開設し,給料が振り込まれたら,水道光熱費等の引き落としに必要な金額のみを残して,それ以外をすべてATM引き出し手数料無料のネット銀行に移してみたらいかがでしょうか。

そうすれば,手数料がかかるのは給料をまとめて引き出す際の1回のみになるので,節約が可能です。

なお,引き出して現金で保管するという方法も考えられますが,現金だと無駄遣いする可能性がありますので,預金にしておいた方がいいと思います。その意味では,クレジットカードは当然として(もちろん債務整理を行う方は使えませんが),デビットカードも持たない方がいいのではないかと思います。

10万円引き出すのに手数料108円くらいたいしたことない,と思われる方もいるかもしれませんが,現在の金利では10万円を1年間銀行の普通預金に預けても108円の利息は付きません。108円の手数料も,それを100回支払えば1万800円です。

また,どうしても無駄遣いしてしまうという方は,ETF(上場投資信託)を購入してみてはいかがでしょうか。例えば,上場インデックスファンド新興国債券は,現在1口5万円弱で購入できますが,現在の配当利回りは6%程度です。つまり,1口購入すれば,1年で3000円程度の配当を受領できます。もちろん,これは投資ですので購入するかどうかは自己責任です。

節約については,古典的名著として「バビロンの大金持ち」(河出文庫)という本があります。タイトルからは怪しげな本のような感じもしますが,毎月の収入の10分の1を貯蓄せよなど,実践的なアドバイスも記載されています。文庫本で900円弱で購入できますので,なかなか貯蓄ができない(カードローンに手を出してしまった)という方は是非読んでみてください。

 

借入金の消滅時効について

弁護士法人心柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

 

今回は,消費者金融や信販会社からの借り入れ(または未払いとなっているクレジットカード利用代金)についての消滅時効について説明したいと思います。

ここ数年だと思いますが,消費者金融や信販会社から貸付債権等を買い取った債権回収会社が,消滅時効期間が経過しているにもかかわらず,債務者に対して支払いを求める催告書を送付したり,裁判上の手続(支払督促または民事訴訟)を行うケースが非常に増えています。なお,消費者金融や信販会社に対する負債については,現行法(本項目執筆時)では時効期間5年の商事消滅時効が適用されます。

もちろん,法律的には,時効の効果(消滅時効では債権消滅の効果)は債務者がその効果を享受する意思を債権者に表示して初めて発生しますので(これを時効の援用といいます),時効の援用がなされない限り,債権者による債務者に対する履行請求は不当とは言えません(時効の援用がなされれば債権は消滅しますので,その消滅した債権の履行を請求することは当然ですが不当です)。

しかし,消滅時効期間が経過している債権について債権者が支払督促または民事訴訟を提起した場合,債務者がその訴訟において(なお支払督促の場合は法律で決められた期限までに異議を提出すると訴訟に移行します)時効を援用する旨の主張を行わない限り,裁判官は,時効援用の主張はないものとして判決を言い渡さなければなりません(民事訴訟では,裁判官は当事者が主張していない要件事実を基に判断してはならない,という弁論主義の原則が適用されます)。つまり,債権者の請求を認容する判決が言い渡され(時効の援用の主張がなされれば請求棄却です),時効期間は振出しに戻ってしまいます(これを時効の中断と言います)。

債権回収会社は,まさにこれを狙って訴訟を提起しており,請求認容の判決を受けた後にその債務者からいくらかでも弁済を受けられれば,利益が出るのです。額面100万円の貸付債権でも,債権回収会社が消費者金融等から債権譲渡を受けるときには既に不良債権となっているのが通常であり,債権回収会社が消費者金融等に支払う債権の売買代金は二束三文だからです。

最後の返済から5年以上経過している貸付債権等について支払督促や民事訴訟の提起をされた場合は,直ちに弁護士等の専門家に法律相談の申し込みを行い,対応について指示を受けてください。

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離婚相談について(再論)

弁護士法人心柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

以前,離婚相談についてブログに記載しましたが,それ以降も,配偶者に離婚を迫られたが離婚を回避したい,という方の相談申し込みが何件かありましたので,弁護士としてできることを再度ご説明したいと思います。

1 配偶者に離婚を迫られ,離婚自体はやむを得ないと考えているが,離婚にあたり取り決めるべき事項について相談したいというケース

離婚の際には,未成年の子がいる場合は親権を決める必要がありますが,それ以外に,養育費,慰謝料,財産分与,年金分割なども取り決めるのが通常です。

親権,養育費,慰謝料,財産分与,年金分割のような,離婚にあたって通常取り決める事項は,いずれも法律問題であり,法律の専門家である弁護士がアドバイスできる事項となります。

また,離婚にあたって,例えば夫が名義人となっている債務について離婚後も妻が一部を負担するという取り決めをしたり,夫が名義人となっている不動産について妻が一定期間居住し続けるという取り決めをしたりすることもあります。これも,前者は債務負担についての取り決め(契約)であり,後者は使用貸借ないし賃貸借契約ですので,いずれも法律問題であり,取り決めの内容や合意条項について弁護士が適切なアドバイスをすることができます。

2 配偶者に離婚を迫られたが離婚を回避する方法について相談したいというケース

離婚の手続は,まず夫婦間で(または代理人を立てて)協議を行い,協議が整わない場合は調停に進み,調停も成立しない場合は訴訟を提起することとなります。

離婚事件を得意とする弁護士は,民法が定める離婚原因については熟知していますので,法律相談の際に夫婦の状況を伺い,調停,訴訟へと進んだ場合の見通しを説明することは可能です。
配偶者に離婚を迫られたが離婚を回避したい,という相談の場合,夫婦は同居しているケースが大半で,不貞やDVなどの離婚原因も見当たらないことが多いですので,現段階で訴訟に進んで判決になっても離婚は認められないのではないか,という説明になると思います。

しかし,離婚を回避するということ,つまり冷え切っていた,または険悪な夫婦間の仲を再び良くするということは,法律問題ではなく事実の問題であり,法律を適用して解決できる問題ではありません。

私も,離婚を回避したいという方の話を聞いていて,こういうところがまずいんだろうなぁ,こういうところを改善したらいいのではないかなぁ,と思うこともありますが,対面している相談者の方は初めて会った方であり,その人(夫婦)のこれまでの人生について全く知りませんので,安易に意見を述べることはしていません。

離婚を回避したいという方は,夫婦を良く知っている方や,夫婦カウンセラー等の専門家に時間をかけて相談していただくのがベストだと思います。

また,ご存じない方もいらっしゃると思いますが,家庭裁判所で行われている夫婦間の調停には「円満調停」,つまり夫婦間を円満に調停してほしいという場合に利用する調停もあり,人生経験豊富な調停委員2名が夫婦それぞれの言い分を聞いてアドバイスをしてくれますので,利用を検討してみてもいいのではないかと思います。

弁護士法人心柏駅法律事務所では,離婚のご相談を承っております。

過払金返還請求訴訟における争点

弁護士法人心 柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

今回は,過払金返還請求訴訟で,貸金業者側と争いになる点の一つである取引の一連・分断についてご説明いたします。

なお,従前は,とくに消費者金融業者は,悪意の受益者について大量の証拠を提出し熱心に争ってきていましたが,現在では,書面上では争ってくるものの,大量の証拠を提出することはほとんどなく,特段の事情が認められることはほぼありません。

⑴ 取引の一連・分断とは,一度完済し,その後再度借り入れを開始しているケースにおいて,いったん完済するまでの取引(「取引1」とします。)と,再度の借り入れ以降の取引(「取引2」とします。)を一連のものとして計算できるかどうかという争点です。

一連で計算できる場合,取引1の完済時に発生している過払金を,取引2における借り入れに充当することができ,通常は,過払金の金額が大きくなります。

逆に,一連計算できない場合,取引1で生じている過払金と,取引2で生じている過払金を別々のものとして請求することになり,通常は,一連で計算するよりも過払金は少額になります。また,取引1の完済時から既に10年が経過していれば,取引1の過払金は時効消滅していることになります。

さらに,一連計算すれば過払になっているが,分断での計算だと債務が残る場合もあります。例えば,分断での引き直し計算(利息制限法所定の制限利率で計算することをいいます。)で,取引1は10万円の過払いになるが,取引2は30万円の債務が残る場合,相殺しても債務が残ります。

⑵ 取引の一連・分断の争点では,まず,取引1と取引2の基本契約が同じかどうかという点がポイントになります。なお,一連,分断の争点は,裁判官によっても判断の仕方が異なりますので,以下の説明は,私の理解を前提とするものであることをご了承ください。

例えば,取引1の完済時に基本契約を解約し,契約書の返還を受けている場合は,取引1と取引2の基本契約が異なりますので,分断での計算が原則となり,例外的に一連計算できる事情があるかどうかを検討することとなります。

取引1の完済時に基本契約を解約しておらず,取引2の開始時も,所持していたカードを使いATMで借り入れたというだけの場合は,原則として一連計算することとなります。

取引1の完済時に基本契約は解約していないが,取引2の開始時に基本契約の内容を変更する契約を締結している場合は,取引1と取引2の基本契約が実質的にも同じかどうか(取引2の変更契約により基本契約が実質的に変わったかどうか)を,諸事情を基に判断し,変わっていないという認定であれば原則として一連で計算し,変わっているという認定であれば例外的に一連計算できる事情があるかどうか(ただしこの事情は基本契約の同一性の認定で考慮した事情と重なる部分があります。)を検討することとなります。

次回以降に続きます。

弁護士法人心柏駅法律事務所では,過払い金返還請求を取り扱っております。

過払金と相続

弁護士法人心 柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

今年になって数件ほど,被相続人の遺産(相続財産)としての過払金の有無について,その調査の依頼を相続人の方から受けています。

調査といってもとくに難しい手続きが必要というわけではなく,被相続人がキャッシング(借り入れ)を行っていた貸金業者(消費者金融や信販会社)に対して,そのキャッシングについての取引履歴の送付を請求し,届いた取引履歴に記載されている取引内容を利息制限法所定の制限利率で引き直して計算すれば,過払金の金額が判明します。

貸金業者に対して取引履歴の送付を請求する際は,ひとまず請求者が被相続人の相続人であることを証明できれば十分です。もちろん,過払金の存在が判明し,業者に対してその返還を請求する際には,相続分の証明も必要です。

当法人柏駅法律事務所で調査の依頼を受任する場合は,ご相談の際に,戸籍や除籍等の書類で被相続人がお亡くなりになった年月日と,ご相談者の方が被相続人の相続人であることを確認させていただいております。なお,被相続人がキャッシングを行っていた業者との契約書等の書類やカードは不要です(残っていればご相談の際にご用意ください)。

なお,過払金返還請求権は金銭債権ですので,相続の発生により,相続人は法定相続分に応じた金額を当然に分割承継します。そのため,例えば法定相続分が2分の1の相続人は,単独で,業者に対し,遺産である過払金の2分の1の金額を請求することができます。

ただし,相続放棄をしてしまうと,当然ですが相続人として過払金の返還請求を行うことはできません。

相続人の方から被相続人の過払金について調査の依頼をいただく場合,被相続人の約定利率に基づく債務残高を相続人の方が全額返済しているケースが多いですが,相続人において返済が困難だという場合でも,相続放棄を進める前に,念のため,過払金返還請求を専門的に取り扱っている法律事務所に一度ご相談することをお勧めいたします。例えば,約定利率に基づく負債が100万円残っていたとしても,取引期間が相当長期である場合には,制限利率で引き直して計算すると多額の過払になっているというケースも相当数存在します。

当法人では,過払金返還請求を多数取り扱っておりますので,過払金の相続につきましてもお気軽にご相談いただければと思います。

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過払金返還請求について

弁護士法人心柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

私が柏市で柏みらい法律事務所を開設したのは2010年6月でしたが,その約4ヶ月弱後に武富士が会社更生法の適用を東京地方裁判所に申請しました。

武富士の会社更生法適用申請により,「過払金返還請求」という手段があることが世間に知れ渡ったわけですが,それ以前はあまり知られていませんでした。

私が柏みらい法律事務所を開設して武富士が会社更生法の適用を申請するまでの4ヶ月弱の期間にも,消費者金融や信販会社への返済に窮しヤミ金にまで手を出してしまった方が債務整理の相談にいらっしゃって,調べたところ,借り入れをしていたすべての消費者金融および信販会社について過払いになっていて,その合計金額も500万円を優に超えていたということがありました。

また,当初個人再生の相談で来られた方が,一部の借り入れについて150万円を超える過払金が生じていることが判明したため,任意整理に変更したというケースもありました。

武富士が会社更生法の適用を申請したというニュースが報道されてからは,債務整理ではなく過払いの相談にいらっしゃる方が増えました。当時は,柏市で過払金返還請求を独立した一つの業務分野としてホームページに記載していた法律事務所は少なかったため,私の事務所では柏市の方を中心に多数の過払金返還請求の依頼を受けていました。

その頃には,消費者金融や信販会社の多くは,訴訟を起こさないとまともな金額を返還してこないようになっていました。そこで,私は,依頼者の方が得られる利益をできるだけ大きくするため,ほぼすべての案件について訴訟を提起して解決していました。

弁護士法人心柏駅法律事務所に移籍した後も,取引の分断など実質的な争点があるケースはもちろんのこと,悪意の受益者など最高裁判例でほぼ解釈が確定した点しか争点がないケースでも,依頼者の方が得られる利益をできるだけ大きくするため、原則として訴訟を提起して解決しています。

わが国は訴訟社会ではないため,ご相談の際に直ちに訴訟を行う旨をご説明すると抵抗感を示す方もいらっしゃいますが,過払金返還請求については,訴訟はあくまで依頼者の方が得られる利益をできるだけ増やすための手段として行っていますので,ご了解いただければと思います。

過払金返還請求権は,最終取引日から10年を経過すると時効で消滅しますので(なお民法改正により消滅時効についても変更される点がありますのでご注意ください),過去に消費者金融や信販会社から借り入れていたという方は,お早めに相談されることをおすすめいたします。

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相続財産管理人の仕事(第2回)

弁護士法人心 柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

今回は,相続財産管理人の業務と関連して特別縁故者に対する相続財産の分与について述べたいと思います。

1.民法958条の3は,「前条の場合において,相当と認めるときは,家庭裁判所は,被相続人と生計を同じくしていた者,被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者の請求によって,これらの者に,清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。」と規定しています。

本条は特別縁故者に対する相続財産の分与を定めた規定ですが,相続人が存在していないことを前提としていますので,相続人が存在している場合には,たとえ被相続人の療養看護に努めた者であったも,相続財産の分与を請求することはできません(被相続人は,相続人でない者に対する相続財産の分与を希望する場合は,生前に遺言を作成しておく必要があります)。

2.相続人がいないケースで,被相続人と生前の交流はほとんどなかった親戚が,被相続人の死亡後に葬儀などに尽力して多額の出費をし,相続財産を管理して相続財産管理人選任の申立てを行ったという場合(これを「死後の縁故」といいます。),現在の実務では,相続財産の分与は通常認められません。
また,葬儀費用は喪主の債務となりますので,相続財産からの支払を受けることはできません。葬儀費用は被相続人の債務であると誤解している方もいらっしゃいますので,十分注意が必要です。

3.被相続人の療養看護などを行い,特別縁故者と認められるような関係があったとしても,相続財産の分与を求める際には,特別縁故者であったことを証明する資料が必要です。
被相続人と同居し生計を同じくしていたという場合であれば立証も容易な場合が多いと思いますが,同居せずに療養看護に努めていたというようなケースでは,被相続人と一緒に撮った写真や被相続人からの手紙のような客観的証拠がなければ,特別縁故者として認められない場合もあります。

4.特別縁故者への財産分与を請求する申立てがあった場合,相続財産管理人は,その申立てについて,裁判所に対し意見を述べることとなります。また,特別の縁故の有無について,家庭裁判所調査官による調査が行われることもあります。

私が相続財産管理人を担当した案件で,複数人から特別縁故者に対する財産分与の申立てがなされましたが,資料を精査し一部の申立人について特別の縁故を否定する意見書を提出したところ,家庭裁判所調査官による調査が行われました。なお裁判所の結論は私の意見書のとおりとなりました。

相続財産管理人選任の申立てや特別縁故者としての相続財産分与の請求をお考えの方は,当法人までお気軽にご相談ください。

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