任意整理の動向

個人の方の債務整理には,主要な手段として自己破産,個人再生,任意整理があります。このうち,自己破産と個人再生は裁判所で行われる手続になり,任意整理は対象となる貸金業者またはクレジットカード会社と弁護士が個別に交渉を行う手続きとなります。

自己破産と個人再生は,手続について法律に規定があり,また各地方裁判所での実務(例えば自己破産手続における自由財産の拡張についての実際の取扱いや,同時廃止と管財事件の振り分けなど)についてもある程度明確になっていますので,その手続を採用した場合の結果について予測することは比較的容易です。
もちろん,小規模個人再生の場合に,どの債権者が再生計画案に反対するのかについてはやや不明な点はありますが,反対しない債権者がほとんどであり,反対する可能性が高い債権者についてはある程度ネット上に情報が出ています。そのため,債権者の反対により再生計画案が認可されないおそれがある場合は,給与所得者等再生または自己破産を選択することができます。

しかし,任意整理の場合,業者毎に個別に交渉しますので,任意整理についての業者の扱いに変更があった場合には,任意整理後の返済額が当初の想定より多くなる場合があります。ここ数年でも,任意整理による返済回数の上限を60回(5年間)に変更したクレジット会社がありましたし(それ以前は60回を超える回数での合意が可能でした),最近では,それまで84回払いで合意ができていたクレジット会社について,72回までと言われるようになりました。
例えば,負債額が100万円の場合,84回払いですと月々約1万2000円の返済となりますが,72回払いですと月々約1万3900円となります。

それほど差はないのではないかと思われるかもしれませんが,例えばクレジットで購入した自動車があり,生活に自動車が不可欠な場合,自己破産や個人再生を選択すると所有権留保条項により自動車はクレジット会社によって引き揚げられますので,自動車をどうしても残したいという場合は,任意整理を選択するしかありません。そのような場合,任意整理後の返済もギリギリであることがあり,1000円,2000円の違いが大きく影響します(なお,任意整理を行っても返済が難しいという場合は,私は任意整理での受任はお断りしています。)。
家族に借金や債務整理について知られたくないため任意整理を選択する場合も同様です。

最近は任意整理についての業者側の対応も厳しくなっていると感じることが多くなっていますので,相談者の方の収支状況からみて,厳しめの条件を前提として想定される任意整理後の返済額だと返済が厳しいと判断される場合は,任意整理での受任をお断りさせていただくことも増えるかと思います。

 

放置 ダメ ゼッタイ

最近はArkadiaをヘビロテしてます!

東京簡易裁判所の民事の期日には,貸金業者等による訴訟の期日が多数入っています。私も東京簡易裁判所が管轄となっている過払金返還請求訴訟等で時々東京簡易裁判所に出廷しますが,私の案件が始まるまで,傍聴席で貸金業者等による訴訟を多数傍聴することになるのが通常です。期日が10時30分に設定されていても,呼ばれるのは11時過ぎ,ということもあります。
なお,一時期は簡易裁判所で多数の過払金返還訴訟の期日が行われていましたが,今では東京簡易裁判所でもほとんど見ません。

東京簡易裁判所の傍聴席で貸金業者等による訴訟(貸金返還請求訴訟等)を見ていると,被告,つまりお金を借りた側が出頭していないケースもよく見かけます。答弁書も提出しないまま出頭もしないと,第1回目の期日で審理は終了となり,通常は1週間後に判決が言い渡されることになります。
判決が確定すると強制執行が可能になりますので(判決に仮執行宣言が付されている場合は確定前でも可能です),訴訟を起こした貸金業者等が被告(借主)の勤務先を把握している場合は,給料を差し押さえることが可能になります。

給料を差し押さえられた場合,その差押えから逃れるためには,①遅延損害金等を含めた全額を返済する,②自己破産または個人再生を行う,③勤務先を退職する,という方法が考えられますが,③は非現実的で,①も親族等の援助がなければ通常は困難です。

とすると,②を選択するということになりますが,自己破産も個人再生も費用が必要となりますので,給料が差し押さえられた状態だと,その準備に時間がかかることになります。費用の準備に時間がかかると,なかなか申立てをすることができず,差押えをされた状態が継続することになります。

返済が困難になった場合は,すぐに弁護士に相談することが重要ですが,相談しないまま延滞を継続していた場合でも,訴訟を起こされた場合は直ちに弁護士に相談しましょう。弁護士に自己破産等を委任し,弁護士から受任通知を業者に対して送付すれば,提起された訴訟についてその後に判決が出たとしても,直ちに給料等を差押えらえることはまずありません。とくに自己破産の場合,弁護士からその旨の通知を受けた後に給料を差し押さえると,その差押えにより返済を受けた金額について破産手続において破産管財人によって否認されることがあり,そうなると業者は返済を受けた金額を破産財団に戻さなければならなくなります。

裁判所から届いた書類を放置することは ダメ ゼッタイ です。

 

返済シミュレーションについて

⑴ 銀行や消費者金融のウェブサイトには,返済のシミュレーションができるページを用意しているものがあります。そこで,試しに消費者金融であるSMBCコンシューマーファイナンス株式会社のウェブサイトにある返済シミュレーションを利用してシミュレーションをしてみました。

まず,借入金額を100万円,返済期間を3年間(36回払い),借入利率を利息制限法の上限利率である15%としますと,毎月の返済金額は3万4665円となりました。つまり,総返済金額は124万7940円(3万4665円×36回)となりました。
返済期間を5年間(60回払い)にすると,毎月の返済金額は2万3789円になりますが,返済総額は142万7340円(2万3789円×60回)に増えます。42万7340円が100万円の借り入れに対する利息の支払となります。

次に,借入金額を50万円,返済期間を3年間(36回払い),借入利率を利息制限法の上限利率である18%としますと,毎月の返済金額は1万8076円になります。返済総額は65万736円(1万8076円×36回)です。
返済期間を5年間(60回払い)にすると,毎月の返済金額は1万2696円となり,返済総額は76万1760円(1万2696円×60回)となります。50万円の借り入れに対し26万1760円を利息として支払うことになります。

⑵ では,50万円(借入利率18%)の借り入れが6本ある場合はどうなるでしょうか。なお便宜上,借入金額を300万円と入力してシミュレーションをします。

まず,返済期間を3年間(36回払い)とした場合は,毎月の返済金額は10万8457円になります。返済総額は390万4452円です。
返済期間を5年間(60回払い)とすると,毎月の返済金額は7万6180円となり,返済総額は457万800円となります。157万800円が合計300万円の借り入れに対する利息の支払いとなります。157万円もあれば,中古の小型車は余裕で購入できるでしょう。

⑶ 弁護士事務所に債務整理の相談に来られる方で,返済総額などをあらかじめシミュレーションして借り入れをなさっている方はほとんどいらっしゃいません。
しかし,借入を行う前にしっかりシミュレーションをしておけば,多重債務に陥る怖さもあらかじめ知ることができますので,借りたいという欲望を抑えることができるでしょう(一度契約すると,ATMで極度額まで借りれますので,預金を引き出す感覚で借り入れを行ってしまう方もいらっしゃいます)。

多重債務に陥る前に,一度,返済のシミュレーションを行ってみてください。

過払金返還請求における争点2

今回は,過払金返還請求で近時貸金業者側が争うようになってきた過払金の消滅時効について取り上げます。なお,以下の記載は本記事投稿時の民法を前提とした内容です(令和2年4月1日施行予定の民法改正により消滅時効についても内容が変わります)。

まず,過払金の消滅時効について判示したのは最高裁判所平成21年1月22日です。この判決は,「過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は,過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り,同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当である。」と判示しました。

つまり,過払金の消滅時効は,原則として,完済している場合は完済時,完済前の場合は最後の取引時(貸付または返済)から進行します。

上記のように判断した理由について,最高裁は次のように述べています。

「過払金充当合意においては,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)を行使することは通常想定されていないものというべきである。」

なお,過払金充当合意とは,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意です。

つまり,最高裁は,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り過払金返還請求権を行使することは期待できないから,過払金の消滅時効の起算点を最後の取引時としたのです。

この,「新たな借入金債務の発生が見込まれる限り」という部分に貸金業者が目を付け,主張するようになったのが,貸付停止措置を取った時点を起算点とする消滅時効の主張です。貸付停止措置により,新たな借入金債務の発生が見込まれなくなったから,その時点から過払金返還請求権の行使が期待できるようになった,という主張です。ただし,通常は,「貸付停止措置」という名の明確な措置があるわけではなく,貸付限度額(極度額)をゼロにすることを貸付停止措置と呼ぶ貸金業者が大半です(借主の信用状態が悪くなったから貸付限度額をゼロにし,貸付停止措置を取ったなどと主張してきます)。

貸付限度額をゼロに変更された場合にも,その後に増額される可能性がありますので,このような貸金業者側の主張が認められることはほとんどないですが,信用状態がかなり失墜している場合に貸金業者側の主張が認めらている下級審判例もあります。

過払金の請求は最後の取引から10年は大丈夫だと思っている方もいらっしゃるかと思いますが,念のため,最後の借入日がいつになっているかもチェックし,早めに弁護士にご相談ください。

柏で過払い金についてのご相談をお考えの方はこちら

給与所得者等再生について

個人の方の債務整理の手段としては、主なものとして、任意整理、個人再生およ
び自己破産があります。このうち、件数的に最も多いのは任意整理で、その次が
自己破産です。個人再生はそれほど件数は多くありません。

個人再生の件数が少ないのは、個人再生を行うには安定した収入が必要であり、
また、個人再生をやらなければならないほど負債が増大している(または収入が
減っている)方の場合、通常は自己破産の要件(支払不能)も満たしますので
(厳密には、個人再生の要件と自己破産の要件は異なります)、租税公課等の非
免責債権を除くすべての負債が免責される自己破産を選択しがちになるからだと
思われます(個人再生だと、一定金額を返済する必要があります)

また、個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生がありますが、大多数を
占めるのは小規模個人再生で、給与所得者等再生はほとんどありません。給与所
得者等再生があまり使われていないのは、給与所得者等再生の場合、小規模個人
再生よりも返済額が多くなるのが通常だからです。

小規模個人再生では、再生計画で返済する金額(最低弁済額)は、①債権額基準、
②清算価値基準のいずれかで決まります。例えば、再生債権の総額が450万円
で、清算価値が90万円の場合、最低弁済額は①では100万円、②では90万
円となり、①の100万円が最低弁済額になります。
しかし、給与所得者等再生では、③可処分所得の2年分、という基準が加わりま
す。この③可処分所得の2年分が、比較的高額になるというわけです。

それでは、この給与所得者等再生を使うケースについて以下説明したいと思いま
す。

(1)小規模個人再生だと書面決議で再生計画案が否決される可能性がある場合
小規模個人再生では、再生計画案について、再生債権者による書面決議が行われ
ます。例えば、再生債権者がA社、B社、C社の3社で、それぞれの債権額を3
00万円、150万円、100万円とします。この場合において、A社が書面決
議で再生計画案に反対すると、再生計画案は否決されることになります。A社の
債権額は、総債権額の過半数を占めているからです。

他方、給与所得者等再生では、再生債権者による書面決議はありません。再生計
画案について裁判所が認可を出せば、再生債権者はそれに従わざるを得なくなり
ます。

そこで、小規模個人再生では書面決議で再生計画案が否決される可能性がある場
合は、給与所得者等再生を選択することになります。

(2)③よりも①または②の方が高額の場合
給与所得者等再生では、最低弁済額の基準として③可処分所得の2年分が加わっ
ていますが、この可処分所得の2年分よりも①債権額基準または②清算価値基準
による金額の方が大きい場合は、給与所得等再生を検討することになります。小
規模個人再生では、再生計画案について書面決議がありますので、再生計画によ
る返済金額が変わらないのであれば、書面決議のない給与所得者等再生を選択し
た方が安全だからです。

ただし、③が①または②よりも低額になるのはレアケースだと思われます。

給与所得者等再生の詳細につきましては,弁護士にご相談ください。

消費税の増税にともなう予納金の増額について

令和元年(2019年)10月1日から,消費税の利率が10%になります。

消費税の増税にともない,官報広告に必要となる手数料も増額となりますので,破産手続や個人再生手続において,官報広告費として納付する予納金も増額になります。

例えば,千葉地方裁判所(支部も含みます)の破産同時廃止手続では,予納金は1万1644円から1万1859円へ値上げになります。個人の方の管財手続では,1万8205円から1万8543円に値上げとなります。

なお,官報公告の手数料は本年4月にも値上げしており,それにともない予納金も値上げされていました。上記の1万1644円(同時廃止手続)および1万8205円(個人の管財手続)は,4月の値上げ後の金額です。

ところで,破産手続では,同時廃止の場合を除き,上記の官報広告費としての予納金のほかに,破産管財人に引き継ぐ予納金を準備する必要があります。千葉地方裁判所(支部も含みます)では,個人または法人の少額管財手続では,この予納金として20万円を準備する必要があります。

少額管財手続では,破産管財人の業務として相当額の出費が必要となるものは想定されておらず,この20万円の予納金は,破産管財人の報酬に充てることが予定されています。

なお,千葉地方裁判所(支部を含みます)では,個人再生手続で個人再生委員が選任される場合,住宅資金特別条項を定める手続きの場合は20万円,定めない手続の場合は15万円必要となりますが,この金額も再生委員の報酬に充てられるものです。

ところで,私は消費税が5%のときから弁護士をしており,千葉地方裁判所松戸支部で破産管財人や個人再生委員を担当していますが,官報広告費としての予納金は消費税の増税にともない値上げされているものの,少額管財手続の引き継ぎ予納金や個人再生手続での個人再生委員の費用は20万円ないし15万円に据え置かれたままです。10%への増税後も,金額は同じです。

20万円が破産管財人ないし個人再生委員の報酬として支給される場合,これは消費税込みの金額となりますので,消費税が5%の場合の税抜きの金額は19万477円,8%の場合は18万5184円,10%の場合は18万1819円になります。

 

個人再生のご相談について

今回は,弁護士に個人再生を相談いただく際に,確認,準備いただきたい点についてご説明します。

① 個人再生は,法律のルールにしたがい圧縮された債務を,再生計画で定められた期間で返済する手続きです。返済期間は原則3年で,特別の事情があれば5年まで延長可能です。

つまり,個人再生手続きは,破産手続と異なり返済をすることを前提としますので,毎月どの程度の金額を返済に充てることができるか,弁護士へのご相談の前にチェックしていただく必要があります。

とくに,住宅ローンがあり,自宅を残すために住宅資金特別条項の利用を希望されている方の場合,配偶者や子ども等の家族がいる場合がほとんどですので,子どもの成長,進学等で増えることが想定される支出も考慮して返済に充てることができる金額を計算していただく必要があります。

② 個人再生手続きでは,住宅資金特別条項を利用することにより,住宅ローンの支払いは継続しながら,その他の負債(カードローン,カードショッピング等)を整理することが可能です。これにより,居住する自宅を残すことが可能になります。

この住宅資金特別条項を利用するためには,一定の要件が必要となりますので,その確認のため,ご相談の際に住宅ローンの契約関係書類,登記事項証明書(不動産登記)をご準備いただくとスムーズにご相談が進みます。例えば,住宅に住宅ローン以外の債務の抵当権(例えば,消費者金融会社が提供している不動産担保ローンなど)が設定されている場合は,住宅資金特別条項を利用することはできませんが,これは登記事項証明書により確認でいます。

また,住宅ローンとしての借り入れであっても,例えば借入金額3500万円のうち500万円が住宅購入の際の諸費用(仲介手数料,登記費用等)の支払いや家財道具(電器,カーテン等)の購入費用に充てられている場合,この500万円の部分は住宅資金にはあたらないため,住宅資金特別条項を利用できるかどうか,慎重に検討する必要があります。

住宅ローン契約関係の書類には,住宅ローンとして借り入れた金銭の使途が記載されていますので,その書類をご用意いただければ,初回のご相談の際に確認が可能になります。

個人再生委員について

1 個人再生について,千葉地方裁判所(本庁,支部)では,弁護士が代理人として申立てを行う場合は,原則として再生委員は選任しないという扱いになっています。弁護士が代理人になっていない場合(司法書士が書類を作成して申立てを行う場合など)は,個人再生委員(弁護士)が選任され,住宅資金特別条項を利用する場合は20万円,利用しない場合は15万円の再生委員費用が必要となります。なお,この費用の支払いについては分割での支払いが認められています。

2 弁護士が代理人として申し立てた場合でも,例外的に個人再生委員が選任されることがあります。選任される基準については,千葉地方裁判所が公表しているわけではありませんので推測になりますが,当該事案に何らかの法律上の問題があり,手続を進めるにあたって個人再生委員の意見も必要な場合に選任が行われているように見受けられます。

なお,個人再生委員の主な業務は,再生債務者の財産状況等をチェックし,手続について裁判所に意見書を提出する(例えば,「再生計画案の認可が相当である」など)ことです。

3 個人再生手続きでは,再生債権を確定し,それに基づいて再生計画案を作成することがメインになります。再生債務者は,その再生計画案に従って返済をすることになりますが,再生債務者の収入状況等にかんがみその返済が厳しいということであれば(これを「履行可能性がない」といいます),再生計画は認可されません。

特に,住宅資金特別条項を利用する個人再生を行う場合,自宅を残すためにある程度無理をして個人再生を申し立てているケースもありますので,そのような場合は,弁護士が代理人に就いていても,履行可能性を厳しくチェックするために個人再生委員が選任される可能性が高くなります。

4 個人再生委員は,再生手続の開始決定がなされる前に選任されます。個人再生委員が選任されると,個人再生委員の事務所で再生委員面接が行われます。面接では,申立書や添付資料(銀行口座の通帳など)の内容や,当該事案で法律上問題となっている点について再生委員から質問等が行われることになります。

再生委員面接を経て,再生手続を開始することについて問題ないと判断した場合は,個人再生委員は,裁判所に対し再生手続開始を相当と考える旨の意見書を提出し,それに基づいて裁判所は再生手続の開始決定を出すことになります。

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破産事件における任意売却

私は千葉地方裁判所松戸支部から依頼を受けて破産管財人の業務を行っていますが,その際,破産者の方が所有する不動産を売却することがあります。
今回は,自己破産をする方が不動産を所有している場合について,その処理の仕方についてお話ししたいと思います。なお,以下の記述は,私が主に申立てを行っている千葉地方裁判所松戸支部の取り扱いを前提にしています。

まず,自己破産をする方が不動産を所有しているケースで最も多いのは,住宅ローンがあり,その住宅ローン債権者の抵当権が当該不動産に設定されているケースです。
この場合,住宅ローンの残額が不動産の査定額を一定程度以上上回っており,かつ自己破産をする方に少額管財となるための基準をみたす財産(20万円を超える預貯金等)がなければ,同時廃止で進めることが可能です。

他方,住宅ローンの残額が不動産の査定額を上回っているものの(これをオーバーローンといいます),その差が一定程度以下の場合は,他に20万円を超える預貯金等の財産がない場合でも,少額管財手続となり(破産管財人に引き継ぐ予納金として20万円が必要になります),破産管財人が任意売却を試みることになります。

ただし,自己破産の申立前に任意売却手続を行って売却を完了し,破産申立時には何らの財産もないという場合は,同時廃止で進めることが可能です。この場合は,売却手続きについて事前の裁判所のチェックがなされていないことになりますので(破産管財人が売却する場合は,裁判所の許可が必要です),適正な売却価格になるよう,慎重に進める必要があります。適正な売却価格でなく,住宅ローン残高よりも高い金額で売れる可能性があったと裁判所が判断した場合は,破産管財人による調査が必要であるとして少額管財になる可能性があります。

自己破産手続を検討している方で,任意売却も視野に入れている方は,必ず弁護士に相談してから不動産業者に依頼するようにしてください。

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破産管財手続における郵便物の転送

破産管財手続では,破産手続開始から原則として手続終了までの間(原則と記載したのは,例えば債権者集会が複数回行われるケースでは,不要であれば第1回の債権者集会の終了をもって転送をストップすることもあるためです),破産者宛の郵便は破産管財人に転送されます。通常の郵便のほか,レターパックも転送されます。そのため,通信販売でCDや本を購入する際,配送方法がレターパックだと破産管財人に転送されてしまいます。また,ゆうメールは転送の対象外ですが,誤って転送されることもありますので注意が必要です。

転送されるのはあくまで破産者宛の郵便ですので,破産者の同居の家族宛の郵便は転送されません。同居の家族宛の郵便が間違って破産管財人に転送されても,破産管財人は封を開けてその内容物を確認することはできません。

破産者の郵便が破産管財人に転送されるのは,まず第一に,破産管財人が破産者の財産を調査できるようにするためです。破産管財人には弁護士が選任され,私も何件か担当したことがありますが,破産者の郵便の調査により,破産者が忘れて放置していた証券口座が見つかったことが何回かあります。そのため,弁護士に自己破産を依頼する際は,必ずすべての銀行口座,証券口座等を洗い出し,弁護士に申告してください。

ただ,今のようなネット社会では,金融機関等からの連絡はメールやウェブサイトのマイページで完結することも多くなっていますので,郵便物の調査のみでは不十分になってきているというのが実情です。私も,疑わしい事案では金融機関等に直接問い合わせて口座の有無を確認しています。

このように,郵便の転送の第一の目的は破産管財人による破産者の財産調査になりますが,免責不許可事由の調査でも役に立つことがあります。例えば,転送郵便でパチンコ店からのダイレクトメールが定期的に届くことがありますが,このようなダイレクトメールはパチンコ店で何らかの手続きをしないと届きませんので,破産者がパチンコをしていたという推測が働きます。パチンコや競馬などをした経験がある場合は,仮に借金とは関係ないとしても,自己破産を依頼する際に弁護士に申告するようにしてください。

 

 

破産・再生についての最新情報

1 予納金の値上げについて

自己破産や個人再生を行う場合,所定の事項が官報で公告されます。官報で公告を行う場合,所定の手数料(官報公告掲載料金)が必要となりますが,自己破産または個人再生を申し立てた場合,その手数料を裁判所に予納する必要があります。

この官報公告掲載料金ですが,平成31年4月から値上げされますので,それにあわせて裁判所に納付する予納金も値上げされます。

千葉県の東葛6市(柏市,松戸市,鎌ヶ谷市,野田市,流山市,我孫子市)を管轄する千葉地方裁判所松戸支部では,自己破産(同時廃止)の場合の予納金は,従来は1万584円でしたが,値上げにより1万1644円になります。

ちなみに,千葉地方裁判所松戸支部では,少額管財の引継予納金(管財人に引渡す現金)は現在のところ20万円ですが,これは,消費税が5%の頃と変わりません。

少額管財の引継予納金は基本的に管財人の報酬に充てられるものですが,仮に実費等一切かからず20万円すべてが管財人報酬になった場合,その20万円には消費税も含まれますので,税率が5%だとすると20万円のうち9523円が消費税となりますが,税率が8%ですと1万4814円が消費税となります。今後税率が10%に引き上げられた場合,引継予納金が20万円のまま据え置かれると,20万円のうち1万8181円が消費税となり,8%のときと比べて管財人の報酬は目減りすることとなります。

私は千葉地方裁判所松戸支部の破産管財人を引き受けていますので,管財人の立場からすると,消費税率の引き上げに合わせて引継予納金も引き上げてほしいと思うこともありますが,破産を申し立てる方の代理人の立場からしますと,予納金の準備が大変な方もいらっしゃいますので,このまま20万円で据え置いてほしいという気持ちもあります。

2 運用の変化について(千葉地方裁判所松戸支部)

千葉地方裁判所松戸支部では,平成30年4月の裁判官の異動により,破産,個人再生を担当する裁判官が交代しました。

そのため,以下の点で運用に変化が生じています。

⑴ 破産の債権者集会の所要時間

平成30年3月までは,債権者集会は通常5分程度で終了していましたが,現在の担当裁判官は,債権者集会で管財人や破産者の方に対し質問等を行うことが多く,所定の10分を超えることもまれではなくなっています。

そのため,開始予定時刻が10分から20分程度遅れることもあります。

⑵ 個人再生委員の選任

千葉地方裁判所松戸支部では,弁護士が代理人として個人再生の申立てを行う場合は,原則として個人再生委員は選任されませんが,近時,例外的に選任されるケースが増えているとの話があります。

個人再生委員が選任されると,費用(個人再生委員の報酬に充てられます)として20万円(住宅資金特別条項を利用する場合。利用しない場合は15万円です。)必要となりますので,注意が必要です。

債務整理と節約

弁護士法人心 柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

債務整理のうち,地方裁判所の手続で行う自己破産や個人再生では過去2年分(千葉地方裁判所の場合。柏市在住の方の場合,自己破産および個人再生手続の管轄は千葉地方裁判所松戸支部になります。)の通帳の写しを提出する必要がありますので,依頼者の方の預金取引の内容を見る機会が多くあります。

その預金取引のうち,もったいないのではないかと私がいつも思うのは,預金を引き出す際のATM手数料です。

たしかに,平日の日中忙しい方であれば,平日の早朝や夜間,または土日に預金を引き出す必要がありますので,やむを得ないと言えるかもしれません。

しかし,ネット銀行を中心に,ATM(セブン銀行ATMなど)での預金引き出しを無料としている銀行もありますので,平日の日中に引き出せないのであれば,都市銀行ではなくネット銀行を使うべきです。

もちろん,給料の支払口座が特定の都市銀行または地方銀行に指定されている場合はやむを得ないですが,ネット銀行もあわせて開設し,給料が振り込まれたら,水道光熱費等の引き落としに必要な金額のみを残して,それ以外をすべてATM引き出し手数料無料のネット銀行に移してみたらいかがでしょうか。

そうすれば,手数料がかかるのは給料をまとめて引き出す際の1回のみになるので,節約が可能です。

なお,引き出して現金で保管するという方法も考えられますが,現金だと無駄遣いする可能性がありますので,預金にしておいた方がいいと思います。その意味では,クレジットカードは当然として(もちろん債務整理を行う方は使えませんが),デビットカードも持たない方がいいのではないかと思います。

10万円引き出すのに手数料108円くらいたいしたことない,と思われる方もいるかもしれませんが,現在の金利では10万円を1年間銀行の普通預金に預けても108円の利息は付きません。108円の手数料も,それを100回支払えば1万800円です。

また,どうしても無駄遣いしてしまうという方は,ETF(上場投資信託)を購入してみてはいかがでしょうか。例えば,上場インデックスファンド新興国債券は,現在1口5万円弱で購入できますが,現在の配当利回りは6%程度です。つまり,1口購入すれば,1年で3000円程度の配当を受領できます。もちろん,これは投資ですので購入するかどうかは自己責任です。

節約については,古典的名著として「バビロンの大金持ち」(河出文庫)という本があります。タイトルからは怪しげな本のような感じもしますが,毎月の収入の10分の1を貯蓄せよなど,実践的なアドバイスも記載されています。文庫本で900円弱で購入できますので,なかなか貯蓄ができない(カードローンに手を出してしまった)という方は是非読んでみてください。

 

借入金の消滅時効について

弁護士法人心柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

 

今回は,消費者金融や信販会社からの借り入れ(または未払いとなっているクレジットカード利用代金)についての消滅時効について説明したいと思います。

ここ数年だと思いますが,消費者金融や信販会社から貸付債権等を買い取った債権回収会社が,消滅時効期間が経過しているにもかかわらず,債務者に対して支払いを求める催告書を送付したり,裁判上の手続(支払督促または民事訴訟)を行うケースが非常に増えています。なお,消費者金融や信販会社に対する負債については,現行法(本項目執筆時)では時効期間5年の商事消滅時効が適用されます。

もちろん,法律的には,時効の効果(消滅時効では債権消滅の効果)は債務者がその効果を享受する意思を債権者に表示して初めて発生しますので(これを時効の援用といいます),時効の援用がなされない限り,債権者による債務者に対する履行請求は不当とは言えません(時効の援用がなされれば債権は消滅しますので,その消滅した債権の履行を請求することは当然ですが不当です)。

しかし,消滅時効期間が経過している債権について債権者が支払督促または民事訴訟を提起した場合,債務者がその訴訟において(なお支払督促の場合は法律で決められた期限までに異議を提出すると訴訟に移行します)時効を援用する旨の主張を行わない限り,裁判官は,時効援用の主張はないものとして判決を言い渡さなければなりません(民事訴訟では,裁判官は当事者が主張していない要件事実を基に判断してはならない,という弁論主義の原則が適用されます)。つまり,債権者の請求を認容する判決が言い渡され(時効の援用の主張がなされれば請求棄却です),時効期間は振出しに戻ってしまいます(これを時効の中断と言います)。

債権回収会社は,まさにこれを狙って訴訟を提起しており,請求認容の判決を受けた後にその債務者からいくらかでも弁済を受けられれば,利益が出るのです。額面100万円の貸付債権でも,債権回収会社が消費者金融等から債権譲渡を受けるときには既に不良債権となっているのが通常であり,債権回収会社が消費者金融等に支払う債権の売買代金は二束三文だからです。

最後の返済から5年以上経過している貸付債権等について支払督促や民事訴訟の提起をされた場合は,直ちに弁護士等の専門家に法律相談の申し込みを行い,対応について指示を受けてください。

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個人再生の活用について

弁護士法人心 柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

今回は,債務整理の手段である個人再生の活用についてお話ししたいと思います。

1 借入額の増大や収入の減少により返済が少々厳しくなった場合に,手軽に取り得る債務整理の手段として,任意整理と呼ばれる手続があります。

これは,貸金業者やクレジット会社と個別に交渉して,毎月の返済金額を支払い可能な金額に変更してもらう手続きです。あくまで個別交渉ですので,借入等を行っているすべての業者と交渉する必要はなく,例えば所有権留保の合意がある車のローンや(任意整理をすると車を引き揚げられます),残額が少ない貸金業者(残額が少ないと弁護士に費用を払って任意整理を行うメリットがあまりない場合があります)についてはそのまま返済を継続するということもできます。

しかし,任意整理の場合,利息制限法の制限利率で計算し直す必要がある場合を除き,債権額の減額に応じる貸金業者等はほぼ皆無で,将来利息の免除が限度です(将来利息の付加を求める業者もあります)。つまり,任意整理では,例えば債務整理に入った段階で300万円の負債があり毎月8万円ずつ返済していた場合,通常のケースでは,負債総額は300万円のままで,これを例えば毎月5万円ずつ無利息で返済する,という取り決めを行うことになります。なお,返済期間は原則として最長5年としている業者が多いです。

このケースで,毎月5万円であれば余裕で返済できるのであれば何も問題はないですが,5万円でもギリギリであるという場合は,急な出費により返済が困難になり滞ってしまうと,再度債務整理を行わなければならなくなります。

また,任意整理はあくまで業者との個別の交渉になりますので,業者が交渉に応じない場合は,債務整理の目的を達成することはできません(一部の貸金業者は任意整理に応じず一括返済を求めてきます)。
この場合は,債務整理を行うのであれば,自己破産または個人再生を選択せざるを得ません。

2 裁判所の手続で行う個人再生では,例えば負債総額が100万円以上500万円未満で,とくに財産もない場合,100万円を原則3年,最長5年で返済すれば,残額は免責されます(100万円を超える財産がある場合は,その財産の価額に相当する金額を返済することになります)。負債総額が500万円以上1500万円未満の場合は,その5分の1の金額を3年~5年で返済することになります(5分の1の金額を超える財産がある場合は,その財産の価額に相当する金額を返済します)。

負債総額が300万円の場合,任意整理では,返済期間を5年としても毎月5万円の返済が必要ですが,個人再生では返済期間を3年としても毎月の返済額は2万8000円程度になります。

ただし,車のローンや住宅ローンも個人再生の対象となりますので,原則として所有権留保の付いた車は引き揚げられ,抵当権の設定されている住宅は売却されることになります(なお,住宅ローン特則を使うことで住宅を残しながら個人再生を行うことは可能です)。

3 任意整理のご相談では,任意整理を行えば余裕で返済できるという方もいらっしゃいますが,任意整理を行ってもギリギリという方も多いですので,個人再生も積極的に検討していただければと思います。

なお,個人再生は,任意整理よりも時間がかかり,依頼者の方の負担も多く(書類の準備など),弁護士費用も任意整理より通常は割高ですが,負債総額が圧縮され返済の負担が任意整理よりも軽減されることを考えると,そのようなデメリットを超えるメリットは十分にあると思います。

返済にお困りの方は,当法人までお気軽にご相談ください。債務整理のご相談は初回無料です。

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債務整理のご相談の際に準備いただきたいことについて

弁護士法人心柏駅法律事務所の弁護士の白方です。

当事務所では債務整理・過払金請求のご相談を多数お受けしておりますが,今回は任意整理と個人再生のご相談の際に事前に準備していただきたい点を2点ご説明したいと思います。

(1)任意整理のご相談の際に事前に準備していただきたい点

任意整理は,各業者と個別に交渉し,返済総額と返済方法を取り決める債務整理方法です。毎月の返済がきつくなったが,毎月の返済額を減らせば負債全部を返済できる見込みがある場合に使われる手続きです。

返済を継続することが前提ですので,任意整理のご相談の際には,家計表を作成することにより毎月返済にあてられる金額を算出することが重要となります。

家計表を作成する際は,収入に変動がある方の場合は(例えば月々の手取りに占める歩合給や残業代の割合が大きい方など),収入を低めに見積もるとよいでしょう。債務整理のご相談でときどきあるケースに,会社内での異動にともない残業が減少し,残業代が入らなくなったために返済が厳しくなった,というものがあります。

また,近いうちに多額の出費が見込まれている場合は(例えば子どもの大学進学など),その際の出費も考慮して毎月の返済可能額を算出する必要があります。

任意整理のご相談では,ご相談者のみなさまに算出いただいた返済可能額を前提として,任意整理が可能かどうか,可能であればどのような返済条件にするのかを判断しますので,できるだけ正確に毎月の返済可能額を算出していただくことが重要となります。

(2)個人再生のご相談の際に事前に準備していただきたい点

個人再生も法律の規定に従って決められた金額を返済する手続きですので,任意整理と同じように家計表を作成いただくことがまず重要となります。

次に,個人再生のご相談で多いのは住宅を残して債務整理をしたいという内容のものですが,清算価値保障原則との関係で,住宅の査定額から住宅ローンの残額を控除した金額がプラスになる場合(これをアンダーローンといいます),その金額を財産として計上する必要があります。

住宅を購入してから長期間経過している場合や,購入の際に多額の頭金を支払っている場合は,アンダーローンになっているケースがありますので,相談の前に不動産業者の査定書(無料で作成してくれます)を準備いただくとご相談がスムーズに進みます。

 

弁護士法人心柏駅法律事務所では,債務整理のご相談も多数受けておりますので,お気軽にご相談いただければと思います。

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